アメリカに端を発した金融危機は昨年の秋以降、全世界に波及して、重苦しい空気につつまれたまま、平成21年(2009年)の年明けを迎えることとなった。中央区内でも特に地場産業の印刷製本業は「年末になって注文が止まった」という声が多く聞かれる。町会や団体の新年会の話題は景気の動向に集中している。本紙は毎年、矢田区長に新年インタビューをしているが、こうした実情から、まず不況下での区政のカジとりへの抱負から聞いた。区長は、こういう時こそ「禍転じて福となす」の諺の精神で区政に望む決意を語った。また10月にIOCで決まるオリンピック開催地については「東京招致運動の先頭に立つ」との決意を示した。次いで「第2次緊急経済対策」「中央・明石・明正の学校改築の財政展望」「城東・泰明・常盤・阪本4校の改築の行方」「派遣労働者を受け入れた経過」について質問した。なお築地市場の今後についても質問したが、インタビューは13日に行い、15日に東京都が「豊洲への移転を平成26年度に持ち越す」との方針を明らかにして、新しい局面に入ったため区長答弁は割愛しました。
「禍を転じて福となす」
昨年来の不況は長引くものと予想され、区政にも影響が大きいと思われますが、年頭に当たり、区政にのぞむ決意といったものをお聞かせください。
「景気の後退によりまして、リストラ、賃金カットなど困窮の度を増しています。従いまして、こうした事態を打開していかなければならないわけで、それには、昔から『禍(わざわい)を転じて福となす』という諺がありますが、まさに今こそ『福となす』絶好の機会を天は私たちにくださった、こういう認識をしております。従って、安全・安心、不安のないまちを作るんだという方向に全ての施策を方向づけていかなければなりません。また景気の浮揚、これは常に中央区に課せられた責務でありますからそれに全力を尽す。つまりこの中央区から景気浮揚の狼煙をあげ、全国へ波及させていかねばなりません。その施策は昨年9月の緊急経済対策、これが第1弾として発射しましたが、先般(1月7日)第2弾の緊急対策7項目を打ちあげました。第3弾は来年度予算でうちあげるわけです」
「今年は、また、政治の季節でもあります。4年に1度の都議会選挙、また9月までに衆議院選挙が必ずある。こうした選挙戦を通じて、必ず明るく希望のもてる未来が来るもの、またそうした施策の展開もそういった中から生れてくるもの、そういうふうに確信しております。経済問題のほか、環境問題、平和の問題、これも今、私たち人類が直面している、突き付けられている重要な課題であります。こういった課題も、選挙戦によって大いに論じられるであろうと認識しています」
5輪招致の先頭に立つ
「また、10月2日にはオリンピックの招致、東京に来るのかどうか、これが決定される、これも非常に重要ですね。本区はメーンスタジアムが晴海に計画されているなど地元中の地元でありますから、区を挙げて招致運動を展開していきたい。私はその先頭に立っていく、こういうふうに決意しています。オリンピック、これはスポーツと平和の祭典でありますし、子どもたちに夢と希望を与える最適なものと認識しています。町会、商店会にもご協力を願って、区をあげての誘致運動を展開してまいりたい。特に重要なのは、4月、IOCが晴海など会場を見にくる、世論の動向など調べにくるということですから、その時に地元や都民の意気があがっていなければとんでもないことになるのですから、IOCのメンバーにも理解してもらえるように、区をあげて実行していきたい。むろん、オリンピック招致は中央区の場合、交通問題とかアクセスとか問題があります。勝どき駅の混雑については私も視察しましたが、朝8時15分ごろは、ものすごい混雑でした。立石都議も都議会で質問して都は改善を約束しています。区としても13日に都知事に要望書を提出し、公共交通の整備では、都心と臨海部を結ぶLRTなど新たな公共交通の整備、大江戸線勝どき駅についてはホームの増築を含めた抜本的な改良策を求めました。また関連施設については地域住民の生活を保障し、本区と十分な協議を行うようにと、要望しました。日本が暗くなっている時に、オリンピックを招致することは大へん意義のある施策であると評価しているわけでね、日本が再生していく起爆剤になるものと思っています。また、築地市場からメディアセンターがはずれることになりまして、これは良いことで議会も区民も誘致活動がやりやすくなった。従って区議会の理解もいただけるものと、確信しています」
第2次緊急経済対策
昨年秋からの不況は昨年暮には「仕事が全く来なくなった」という悲鳴を聞くに至り、先ほどの昨年9月に次いでの第2次緊急経済対策はどんな内容ですか。
「12月の景気動向調査(別項)によりますと、現状、先行き判断ともに2回連続の最低値で、厳しい経営状況を示しています。中央区の融資制度はどこの自治体よりも進んでいて、区への斡旋件数も447と非常に多くなっていて、実行されたのは319件、71.4%が実施された。この制度をまだ知らない人もいるので多くの方に利用していただきたいですね。むろん、公共事業の前倒しも行い、これは新年度の事業になりますが、観光商業まつりの充実とか共通買い物券もやります。雇用の問題をかかえていますが、良かったと思うのは70歳就労社会というのに早々に手をつけて、その分野でかなりの実績をあげてきました。昨年10月にこれまでのシステムを大幅に改善して行ってきました。今、高齢者だけでなく一般の人も大変なんだから、東京駅前のハローワークと協力して中央区の窓口を作ってくれた厚生労働省も大変心強く思っています」
「人は仕事をするということが、いちばん大事ですね。生活の面の自立また社会参加、生きがい、いろいろな面で仕事を持つことは重要です。70歳就労社会をしっかり作って、不安のないまちづくりやセーフティネットを確立したい。幸い、都は税収が減るようだが、本区は人口がどんどん増えて、11万人口を達成したからやめるんではなく、15万を目標に人口の増加を図っていきたい。昨年1年でも5472人、5.2%も増え、12年連続の人口増、この実績ですね。本区の税収は増えているわけですから、意をつよくして、この税収の還元ですね。子育て支援や出産支援に介護。特に特養ホームは待機者も多いので、平成24年までに3カ所につくりたい。特に日本橋については新年度の長期計画にくみこみたいですね。まちづくりも一服つく時で、少し落ち着いたまちづくりを、と私個人の思いがありますね。もちろん着工中のものは進めますが、計画中の件については緑化など環境面の行政指導はきちんと進めます」
小学校改築の財源は
教育委員会は昨年末に中央・明石・明正小学校の3校について改築の計画を明らかにしました。屋上校庭など画期的な手法を取り入れていますが、3校それぞれに費用はどのくらい要するのか、不況下での見通しは大丈夫でしょうか。
「今後10年間の計画期間中に3校の改築を事業計画化しました。改築経費につきましては、現時点では「基本計画2008」において、3校合わせて136億円の事業費を見込んでおります。今後、経済状況はますます厳しさを増すものと思われますが、主な財源として、学校の改築や改修需要に備えてこれまで積み立ててきました教育施設整備基金103億円(平成20年9月現在)などを活用することで対応できるものと考えています。なお、改築にあたりましては、子どもたちの「学びの場」「生活の場」として学校施設を充実させるとともに、コミュニティ活動や防災拠点など、地域の核としての機能の強化も図ってまいります。また、地球環境にやさしい学校づくりも重要であり、自然エネルギー利用や省エネルギー設備を備えるとともに、屋上緑化や壁面緑化についても積極的に進めていきたいと考えております。今後、各学校ごとに改築協議会(仮称)を設置して、地域や学校関係者の皆さまからのご意見をいただくことにしております」
4小学校改築の行方
小学校改築候補のうち、城東・泰明・常盤・阪本小学校の4校については、かつて新しい学校づくりを検討していたが、その点についての言及がないようです。今後の地元対応も含めて方向性を示してほしい。
「昨年3月の答申を踏まえ、児童の受入に余裕のある学校として城東・泰明・常盤・阪本小学校など4校につきましては通学区域に関係なく就学を認める「特認校制度」を導入し、本年4月から実施してまいります。さらに城東・常盤・阪本小学校の3校は、本年度からフロンティアスクールとして、多様な人間関係を創る学校間のネットワークの研究やICT機器を活用する先駆的な授業を展開して魅力ある学校づくりを進めています。またこの4校は、他の学校施設と同様に耐震基準を満たしていますが、築年数が概ね80年を経過しております。そのため昨年12月の「小学校改築対象校の選定および改築順について(中間のまとめ)」の中で、今後のあり方の検討をしました。城東小学校は東京駅前地区のまちづくりと連動した整備を、泰明・常盤小学校は都の歴史的建造物に指定されていますので外観の保存や再生に配慮した整備方法を、また阪本小学校は建物の状況が比較的良好ですが今後の児童数の動向を見定め、各校とも地域の意見を伺ってまいりたい」
派遣労働者を受け入れ
不況の深刻化にともない、先日、中央区が閉校した小学校(十思・京華スクエア)の講堂を派遣労働者の失職にともない宿泊所として開放したと報じられたが、その経過と考え方、今後について知らせてほしい。
「正月の2日の午後、歌舞伎座でお別れの手打式があって、その帰りに私は区役所に寄り、本を読んでいたんだね。そしたら民主党の代表代行の管直人さんから5時すぎに電話がありましてね、菅さん曰く、いま日比谷公園に来てると、派遣村が大変な事態になっていると、150人ほどと思って来て見たら300人を超している。これは対応できないんで中央区の施設を提供してもらえないか、とこういう話を承り高橋副区長と福祉保健部長、秘書室長と連絡をとりまして、ただちに十思と京華スクエアを提供しましょうとただちに行動に移しまして指示をしました。現場を見ないと対応できないのでタクシーで日比谷公園まで行きました。そしたら、すごかったね、あれを見たら、なんとかしないと済まないと思いましたね。そこで岩佐事務局長にもお目にかかって窮状を知りました。菅さん、大村厚生労働副大臣ともお目にかかりました。そうこうしてるうちに、川村官房長官から電話がかかりまして、これは一種の災害のようなものなので中央区のほうにお願いしたいと。ただちに対応していると報告しましたら喜んでいただいてね。7時半ごろ戻ったら幹部の皆さん揃っていて、区議会に連絡とりましたら正副議長、各会派の皆さんも協力しましょうで一致してくれましてね。これは嬉しかったですね。結果的には5日の朝から12日の昼までということになりましたけど、これは区議会はじめ区民の皆さんのあたたかいご理解ご協力の賜物で感謝しております。収容の人数は毎日動きがあって、最高に入ったのは京華80、十思74でした」 |