愛着さえあれば、街をきれいにしよう、安全にしようという意識が自然と生まれるはずです。買い物に出れば、商店街の人たちとのお付き合いが生まれるでしょう。気軽に声をかけ、よいお付き合いができればそれでいいのです。街の活性化や繁栄は、人と人との交流から生まれるのです。水天宮にお参りにこられる方、休日に甘酒横丁をぶらりと散策なさる方、べったら市に毎年来られる方など、外から訪れる人たちにとっても、親しみや温かみを感じられる町であれば、人形町の将来は心配ありません。
 町内会でも、「地域の歴史散歩」などという企画で、名所・旧跡巡りを組んでいるところもあります。2時間ほどかけて、私がご案内しながらお話をします。自転車ツアーもやりました。地域、歴史、文化を知っていただく一助となれば、こんな嬉しいことはありません。


 仕事をしている事とは別に、個人的な趣味ではありますが、この人形町に生まれ、江戸の歴史・文化について興味を持ち、地域の成り立ちや、そこで暮らした人たちの生活を垣間見る楽しさなど、郷土史の研究は、私の生涯学習ともなっています。江戸期260年、泰平の世が続いたのは、一般庶民の生活を謳歌するパワーがあったからでしょう。それは、自然とも密着したじつにバラエティーに富んだものだったようです。祭りがあり、四季折々に楽しい行事や遊びがありました。お花見一つを例にとっても、さくらはもとより、菖蒲、ぼたんなど、早朝に、はすの花のはぜる音を聞いて楽しむなどという風流なものもありました。隅田川では花見、月見、雪見などの船遊びも盛んでした。江戸時代に培われた文化と芸能、職人の技術、庶民の生活の知恵、そして人々の心など、現代の私たちが参考にし、今の生活に生かせるものもたくさんあります。開府400年は、私たちが寄って立つ過去の歴史にほんの少し心を向け、振り返ってみるきっかけとなれば良いと思います。私自身、郷土史の研究を続け、これからもささやかながら地域に役立つ活動を続けて行きたいと思っています。

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                                                          2003年12月掲載記事
                                                ※内容は、掲載当時のものとなります