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1、 なぜ「てん茂」さんに来てみたかったのですか。 |
明石:
「てん茂」さんは、大変歴史が古く、店構えも風情のある木造建築だと、お店にお伺いした同僚や上司から、美味しい天ぷらの自慢話と共に様子も聞かされていました。ですから、江戸情緒の歴史を感じる高級なお店というイメージを持っていました。
せっかく日本橋界隈に勤めておりますので、機会があれば、ご主人が一つ一つ揚げてくださるという最高級の天ぷらをカウンター席で頂くという、そんな贅沢な気分を是非味わってみたいと以前から思っておりましたので、憧れのお店に推薦しました。 |
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2、お店についてお聞かせください。 |
店主:
明治18(1885)年、初代・奥田茂三郎が、日本橋の中央通りに面した、ある商店の前で、毎夕屋台の天ぷら屋を出していたのが当店の始まりで、屋号の「てん茂」は、この茂三郎の名から由来するものです。江戸時代、屋台から始まった江戸前の天ぷら店が、次第に店を構えて商売をする形態に移り変わる頃の明治40年、中央通りの拡張工事で住居がこの地に移転することになったのをきっかけに、当店も店を構える運びになりました。
以後、震災や戦災、またこの辺一帯36軒が焼失した昭和22年の大火により、現在の店は4度目の建物になります。以前の店を手がけてくださった建築家の先生が、当店の度重なる災害を聞き付け、戦後材木が不足した時代に、手持ちの木材を集め再び店の建設に携わってくださったもので、現在の店はその時以来のものです。
お出しする素材は、毎朝、築地魚河岸に足を運び、四季折々の品々を仕入れて参ります。魚は東京湾産をはじめ、素材本来の持ち味の最もあるものを重視し、国内各地の天然物を選んでおります。
オフィス街ということもあり、お客様の7割は会社勤めの方ですが、ご家族連れの方等も含め幅広いお客様からのご愛顧を頂いております。客席はカウンターが9席と、10人程がご利用頂ける座敷がございます。 |
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3、いらしてみたお店の感じはいかがですか。 |
店主:
古いおもむきのある日本家屋の佇まいが印象的です。香ばしい胡麻油の風味が漂う独特な店内の梁や柱は、永い年月を経て重厚な光沢を出し、歴史ある老舗の雰囲気が感じられます。
店内は日本家屋なので天井が高く、窓も目線より高い位置にあるからでしょうか、大変ゆったりとした空間にいる感覚があります。上方から差し込む光が優しく、とても落ちついた感じがします。毎年時節には店内に置いていらっしゃるという鈴虫が涼しげな鳴き声を聞かせてくれ、それがまた何とも言えないムードをかもし出しています。 |
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4、お薦めのメニュー、お酒について教えてください。 |
店主:
早春は魚本来の味のある兵庫県産の白魚、春からは琵琶湖でとれた小ぶりの天然の鮎、春の終わり頃からは最近では稀少になった東京湾または伊勢湾の銀宝。5月からの当店自慢の鮑は、房州産の雄貝で、鮮度が良いために生の状態ではこりこりと堅いのですが、油で揚がるとふっくらと柔らかくなり、戦前より当店の夏の名物となっています。秋からは湾内または松島のハゼが出て参ります。また渋皮をつけたままの生の栗を時間をかけて揚げる「渋皮揚げ」は当店自慢の秋の味覚で、独特の歯ざわりと渋皮の風味が大変好評です。このように、四季を通じて旬の食材をお楽しみ頂いております。
メニューは、昼・夜の部共に、特(12000円)・A(9000円)コース、これに昼のみB(6000円)コースが加わります。何れも、ご飯・みそ腕・お新香付きです。春のBコースの一例としましては、愛知県産遠州灘の巻海老が2本・鮎・穴子・海老と小柱のかき揚げ・椎茸の海老詰め・柿の葉等です。特・Aコースは、それぞれ魚や野菜が更に加わるなど、品数や内容が変わってきます。またお好みで、単品の追加注文も承っております。お酒は、日本酒がキンシ正宗の超特撰(一合800円)、冷酒は、武勇蔵元直送純米「黄鶴樓」(300ml、1500円)、またワインは赤・白を揃えております。 |
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5、OLの明石さんから一言感想をお聞かせください。 |
明石:
塩でしめるほどに、揚げた後柔らかくなるという鮑のソフトな歯ざわりには、驚いてしまいました。わたも天然物のみにあるという旨みがあり大変美味しくいただきました。丸ごと頂けるように頭と尾をから揚げにした鮎の「姿揚げ」。美味しさを封じ込めるため、一度開いたものを再び閉じて揚げるという、きす。また、それだけでお酒の肴になりそうな、まろやかな味がある乳鉢ですった沖縄の天然塩、等々。どれをとっても、素材の味をより一層引き出すための細やかな職人技が加えられており、「手を加えるから料理人」だと、おっしゃるご主人の気風に納得いたします。最近ではすっかり珍しくなったという淡白ながら身がしまってお魚の持っている本来の味が凝縮されている銀宝も堪能させて頂きました。
今度は、是非プライベートで来ることができるよう「これからもがんばって働こう」という活力が沸いてきました。 |
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