日本橋美人新聞No.16夏秋号(2009年)掲載
日本橋美人めぐりは「日本橋美人プロジェクト」が推奨する日本橋の散策コースです。
今回ご紹介するのは日本橋が誇る名建築の数々。 日本橋美人として、より深くフォルムを鑑賞するためにも、 建物の歴史や背景を「識る」ことは大切です。
明治29(一八九六)年に建設後、昭和49(一九七四)年には、国の重要文化財に指定。設計は、東京駅赤煉瓦駅舎も手がけた辰野金吾(一八五四〜一九一九)によるものです。
規則正しく並ぶ窓を配し、秩序と威厳が表現されたネオ・バロック様式で、ベルギーの中央銀行をモデルにしたと言われています。日本経済を牽引してきた歴史の重みを感じながら佇むのも、知性豊かな日本橋美人の姿といえるでしょう。 日本銀行本館・旧館 日本橋本石町2-1-1 MAPふ
関東大震災の被害により昭和4(一九二九)年に建て替えられた三井本館は、平成10(一九九八)年に大規模オフィスビルとして初の重要文化財指定を受けました。
設計時に、三井の総帥團琢磨が示した三つのコンセプト「壮麗」「品位」「簡素」を備えたアメリカ古典主義洋式の優美な建物です。 豊かな芸術性を醸すコリント式列柱や外壁の繊細な装飾が一帯の景観に品格を与え、日本橋美人の街の雰囲気とよく似合っています。。 三井本館 日本橋室町2-1-1 MAPや
大正3(一九一四)年に横川民輔の設計により竣工し、その後改修や増築を重ね、昭和10
(一九三五)年に現在のルネサンス様式の建物に。平成11(一九九九)年には、東京都から「東京都選定歴史的建造物」に選ばれました。 館内の中央ホール五層の吹抜け空間にはパイプオルガンが置かれ、大理石とステンドグラスの織り成す光に包まれた豪華絢爛な天女像が舞っています。冬の夜にはイルミネーションで輝き、日本橋を行き交う日本橋美人を一層華やかに彩ります。 日本橋三越本店 日本橋室町1-4-1 MAP33
日本初のトランクルームとして有名なビルは、昭和5(一九三〇)年に三菱倉庫株式会社の設計で建てられ、今後建て替えが予定されています。
屋上の塔屋、丸みを帯びた壁と窓は船舶の形象。倉庫のイメージを逸脱しています。川に沿った壁面には荷物の搬出入を行ったクレーンの跡もあり、積荷を満載した船の往来で日本橋川が活気に溢れていた時代が感じられます。日本橋美人の記憶に残しておきたい建築物です。 三菱倉庫江戸橋倉庫ビル 日本橋1-19-1 MAP1
昭和5(一九三〇)年に安井武雄の設計で完成し、その後の増築で奥行き約一五〇メートルという細長い建築になりました。
茶色のタイルが重厚な印象を与えていますが、上方の白色セメントとのコントラストが美しい建物。 軒周りに江戸格子のようなデザインが施され、最上層の隅には可愛らしい列柱飾りが並んでいます。そんな遊び心を鑑賞するのも、日本橋美人らしいお洒落な趣きですね。 野村證券日本橋本社 日本橋1-9-1 MAP2
ルネサンス様式を基調にした建築で、片岡安、高橋貞太郎、前田健二郎が設計し、昭和8(一九三三)年に竣工。村野藤吾による昭和27(一九五二)年の増築では、ガラスブロックを大胆に用いた壁面など近代的なデザインが特徴です。当初の建築物と一体不可分の高い完成度を持つと評価され、百貨店として初めて国の重要文化財指定を受ける予定です。日本橋美人にふさわしい、格調ある空間や装飾がショッピングの時間を豊かに彩ります。
日本橋高島屋 日本橋2-4-1 MAP4 日々の時間に追われている女性たちは、街の様子を眺めながら歩く余裕がありません。私も、仕事で立て込んでいる日は、目的地に向かってまっしぐら。ですが、たまにはふと足を止めて、大きく息を吸って、街並みや景色を眺めるゆとりも必要です。
たくさんの名所旧跡がる日本橋。歴史を感じながら街を歩けば、新たな発見と出会い、いつもと違って見えるでしょう。 「日本橋美人」より抜粋 |
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