山田　本日は、株式会社ロイヤルパークホテルの南安総支配人をお訪ねし、日本橋と日本橋美人についてお話を伺います。平成26（２０１４）年６月に、ホテル開業25周年という節目を迎えられました。当初から業務に従事されていらっしゃるので感慨もひとしおと拝察いたしますが、ご経歴についてお聞かせください。
南　おかげさまで当ホテルが四半世紀を迎えることができましたのも、ひとえに皆様からいただいたご愛顧の賜物と心から感謝いたしております。
　私は工学部出身ですが、学生時代にホテルでアルバイトをしたことがきっかけで、この業界に入りました。卒業後は東京ヒルトンホテルを経て、昭和63（１９８８）年にロイヤルパークホテルに入社し、開業準備室でホテルの立ち上げに関われたことは、私の人生にとって意義の深い機会でした。その後、営業、人事、宿泊などの各部署に携わり、平成19（２００７）年に現職に就任いたしております。
　日本橋という魅力ある地域性を活かし、「国際級のデラックスホテル」というコンセプトのもとにオープンしたのちは、「地元に密着」したサービスで他社との差別化を図ってまいりました。今後も、より一層、お客様にご満足をいただけるホテルを目指す所存です。
山田　平成32（２０２０）年の「東京オリンピック・パラリンピック」開催が決定し、政府は訪日外国人を同年初めまでに年間２０００万人超、将来的には３０００万人にまで増加させるという目標を掲げています。「おもてなし（ホスピタリティ）」という日本独特の文化について、どのようなお考えをお持ちですか。
南　弊社でも東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて観光産業の担い手として環境を整えるべく、さまざまな取り組みに着手しています。お客様がホテルを選ばれるポイントは「安心・安全・便利・娯楽」ですので、セキュリティは無論のこと、ハード面でもWi-Fi環境の充実やホテル内の表示・表記物のバイリンガル化など、常に便利で快適な状態の整備を心掛けています。
　弊社には、開業から「 Best for the Guest ―お客様に最善を尽くす―」という理念が受け継がれております。言い換えれば、お客様の立場に立って物事を考え、喜んでいただける「サービス」をご提供することです。これが我々ホテルマンにとっては、「おもてなし」の原点なのだと考えています。
　また、このマインドは短期間で身に付けられるのではなく、日本の伝統や文化が根底にあってこそ育まれる精神ではないでしょうか。私は神田で生まれ「神田祭」を通して地域社会に関わったことで、自然に日本人としての礼節や心配りを知ることができました。「江戸の伝統や文化の魅力」の一つには、このように「人がつくられる」ということにもあると思います。
山田　江戸から続く伝統や文化の魅力を、多くの人々に知っていただくことを目的に開催している「EDO ART EXPO（旧名：日本橋美人博覧会）」は、今年で７回目を迎えます。これは、中央区、千代田区、港区、墨田区の名店、企業、文化・観光施設などがパビリオン（会場）となり、協力して江戸の伝統技術や歴史、美意識に関わる展示を行います。本年度は、平成26（２０１４）年９月26日（金）〜10月14日（火）に催すことが決まりました。御社では第一回から事務局を、南総支配人ご自身は事務局長をお務めいただいています。

南　正直なところ、あっという間に７回目に至ったという気持ちです。昨年の第６回では、19日間の会期中に、国内外から延べ40万４０００人もの方々が、多種多様な65以上の会場を訪れてくださいました。参画企業の関係者が定期的に当ホテルにお集まりいただき、「EDO ART EXPO実行委員会」を実施しています。大掛かりな規模のイベントを行えることに、地域社会の連帯感や結束力の強さをあらためて痛感しています。この地の伝統や歴史的背景があってこそ「EDO ART EXPO」の旗印のもとに新たな絆が生まれ、７回も継続していけるのでしょう。
山田　南総支配人ご自身の日本橋のお薦めには、どのような事がありますか。
南　個人的には日本橋��島屋辺りから、神田須田町までの「中央通り」を散策するのが子どもの頃から好きです。また人形町の「甘酒横丁」では、下町情緒や江戸の名残をコンパクトに満喫できるので、海外からのお客様にも自信を持ってお薦めしているスポットです。
　当ホテル内であれば、キーワードは「カウンター」です。カウンター好きの私の発案で全レストラン内には、それぞれのベストポジションに設置しております。お一人でも周囲に気兼ねなく寛いでいただけますし、お連れの方と横に並んで座ることで、親近感を感じ会話が弾む効果もありますからね（笑）。
　また私は「日本橋美人」という地域ブランドにも期待しています。地域ブランド商品は、オリジナリティの確立に不可欠な要素であり、「日本橋美人」というネーミングに愛着を抱き、地域全体の付加価値を向上させていこうという山田プロデューサーの発想には、多いに共感し応援したいと思っています。
山田　御社には、チーフバーテンダーが考案した「日本橋美人カクテル（ロイヤルスコッツB１F）」や料理長の創作による「日本橋美人　美肌粥　御膳（桂花苑B１F）」などの画期的な開発商品がございますね。
　ところで、南支配人にとっての「日本橋美人」とは、どのような女性でしょうか。
南　生まれ育った隣合わせの「神田」から、子ども心に「日本橋」を歩く女性の姿に、憧憬の念を抱いていました。「日本橋美人」は凛とした心根を持ち、粋で上品さを兼ね備えた女性であるという思いは、今も変わることなく抱いています。