HOME > 日本橋トップインタビュー > 株式会社千疋屋総本店 代表取締役社長 大島 博
日本橋美人新聞No.30春夏号(2013年)掲載
インタビューアー:山田 晃子
日本橋美人推進協議会 プロデューサー日本橋OLクラブ部会長 株式会社ヤマダクリエイティブ代表取締役 大島 博(おおしまひろし) 株式会社千疋屋総本店 代表取締役社長 NPO法人東京中央ネット 副理事長 好きなことば〜 則天去私 時には自己主張も必要ですが、私心を捨て時代の空気を読むことで、常に革新を求めていきたいと思います。
山田 本日は、株式会社千疋屋総本店の六代目大島社長をお訪ねし、日本橋と日本橋美人についてお話を伺います。天保5(1834)年創業から続く、御社の沿革をお聞かせください。
大島 武蔵の国埼玉郡千疋の郷(現・埼玉県越谷市東町)で大島流槍術の指南をしていた初代・大島弁蔵が、道場の庭で育てた果物や野菜を船で運び、江戸葺屋町(現・日本橋人形町3丁目)で商いを始めたのが創業にあたります。「水くわし(甘い果物)安うり処」の看板を掲げ、出身地の名をとり「千疋屋弁蔵」と名乗っていたことが、後に「千疋屋」という愛称で呼ばれ屋号となりました。 庶民的な商いは次の代で、浅草の大店の娘である妻の支えもあり、幕末の著名人からご愛顧を受けたことが高級品を取り扱う転機となり大きく飛躍しました。また、質の良い高級な果物に見合った品質管理に、一層の努力を重ねるという徹底した姿勢は今日にも脈々と受け継がれています。 山田 三代目が明治元年に日本橋室町に進出し御社の基礎を築き、フルーツパーラーの前身となる日本初の果物食堂を開業するなど、事業を引継ぎながら日本の文化や慣習が激変するなかで商機を捉え、新たな試みに挑戦し続ける社風を感じます。六代目にご就任されてからは、ブランディングに着手していらっしゃいますね。 大島 「当主の仕事というのは、自分の代でのれんをさらに輝かせ、次の代へつなぐものだ」と五代目の父は語っています。代々の当主たちは時代の流れを巧みに掴み、他にはない発想と先取の精神でのれんを守ってきたのだと思います。私は、千疋屋ブランドの「リヴァイタル・プロジェクト」をスタートし、お客様の手が届く「ひとつ上の豊かさ」をコンセプトに据えて刷新を進めています。 平成25(2013)年3月に竣工する本社ビル(浮世小路千疋屋ビル)の地下1階から4階は、店舗や飲食店、クリニックなどの入った「YUITO ANNEX」としてオープンし、夏頃には1、2階に三重県の物産館も開業します。江戸時代には、日本橋に伊勢や近江などから多くの商人が進出し、街を発展させてきました。日本橋と縁のある地域を誘致することで、新たな賑わいが創出されると思います。 また、五街道の起点であった日本橋では、さまざまな地域のモノや情報が流通する文化がありました。私は、この江戸時代から育まれた「日本橋」のストーリー性は、地域ブランドを考える上でまさに財産と考えています。 山田 御社の「日本橋美人商品(“Japan Beauty from Edo-Tokyo”」では、日本橋美人のブランドコンセプトの核となる魅力的な商品をラインナップしていただいていますね。 大島 千疋屋ブランドには「日本橋」という地域の要素が欠かせませんが、そのうえで女性の健康と美を意識した「日本橋美人商品」の開発に努めています。 「SOYシェイク」は山田さんの著書「日本橋美人」からアイデアをいただいて誕生した弊社の「日本橋美人」シリーズの第一弾です。「梅酒(Plum Wine)」は小田原産の梅と銘酒、「百市の柿酢」と「いちじくジャム」は出雲産で、幕府に献上された果物を使い江戸時代を背景に商品化しました。最近リリースした「はちみつ」は、徳川家康の孫の千姫が、豊臣秀頼の輿入れに持参したものと同じ桑名産で、昔から女性に愛されてきました。これからも女性の 心も身体も美しく する、魅力的な日本橋美人商品をご提案できるように頑張りたいと思います。
山田 大島社長ご自身の、日本橋のお気に入りのスポットはどのようなところですか。
大島 東京メトロ「三越前」駅のコンコース壁面に『熈代勝覧』の複製絵巻があります。日本橋の通りに連なる問屋や店、さまざまな職業の人々が行き交う様子は、いつ見ても飽きません。この前に立つと中央通りに店を構える一商人として、活気のある街を作り上げたいという気概が沸いてきます。 山田 2012年9月28日〜10月16日に開催した「EDO ARTEXPO」は、江戸をテーマに伝統技術や歴史、美意識などに関わる展示を中央区、千代田区、港区、墨田区の名店、ホテル、企業、文化・観光施設などが協力して開催しました。国内外から38万8千人の方々が多種多様な60以上の会場を訪れ、盛況のうちに閉幕し、御社には第一回から展示会場などのご協力をいただいています。 大島 江戸の伝統や文化を引き継いだ街づくりを、地域が協力して推進していくことは大変に意義のあることだと思います。会場としてご協力した浮世絵の展示には、店の雰囲気に良く似合うと高い評価を博し、「児童・生徒の 江戸 書道展」では、入賞者の関係者などに大変に喜んでいただけました。ご来場の皆様には「EDO ART EXPO」を通して、店の雰囲気や接客の姿勢などからも、江戸から続くエッセンスを感じていただければ幸いです。 山田 大島社長にとっての「日本橋美人」とはどのような女性でしょうか。 大島 容姿のみならず精神的にも常に自らを高め磨いている、爽やかな女性が日本橋美人だと思います。一言でいうと「粋」な女性でしょうか。「粋」とは「Cool」でしょうか。 山田 まさに「粋」という言葉の奥深さは「Cool」に繋がりますね。日本橋美人の根底には、この粋の美学の感性が息づいていると思います。
ファッションポイント
異国情緒あふれる更紗文様の訪問着。更紗はおしゃれ着のきものや帯の文様として一般的です。淡い桜色の地に青の濃淡の挿し色が、螺鈿の帯の輝きとの映りが良く、華やかな場面に相応しいコーディネイトです。帯留めや帯揚げの色も春の香りを感じさせます。 着付け 花影きもの塾 衣 装 和Beauty HANAKAGE 撮 影 吉川信之 撮影協力 千疋屋総本店 清水建設株式会社 |
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