HOME > 日本橋トップインタビュー > NPO法人江戸城再建を目指す会 会長 太田資暁
日本橋美人新聞No.27春夏号(2012年)掲載
インタビューアー:山田 晃子
日本橋美人推進協議会 プロデューサー日本橋OLクラブ部会長 株式会社ヤマダクリエイティブ代表取締役 太田資暁(おおたすけあき) NPO法人 江戸城再建を目指す会 会長 太田道灌公墓前祭実行委員会 会長 出光興産株式会社 監査役 好きなことば〜 ふかくこの生を愛すべし かへりみて己を知るべし 学芸を以て性を養うべし 日々新面目あるべし 東洋美術史の研究家で歌人、書家と多彩な活動をした早稲田大学の会津八一教授の言葉が好きです。最近、改めてこの言葉の重みを感じるようになりました。特に「学問芸術をもって品性を養うべし」と言う一文が好きです。
山田 本日は江戸城を築城したことで知られる、太田道灌公(以下、道灌)の第18代目のご子孫で、認定NPO法人江戸城再建を目指す会(以下、再建を目指す会)の太田会長をお訪ねし、日本橋と日本橋美人についてお話を伺います。再建を目指す会の活動についてお聞かせください。
太田 かつて江戸には、大坂城や名古屋城を遥かに凌ぐ規模の天守閣が在りました。残念ながら明暦の大火(1657年)で焼失してしまいましたが、この江戸城を再建し、東京のシンボルにするというのが会の目標のひとつです。世界の首都には歴史と文化に彩られたモニュメントが必ず存在し、観光名所となっています。観光という言葉は中国の易経によると「国の光(魅力)を観る」ことだそうです。「観光立国」を目指す日本にとって江戸城の再建は、極めて重要なランドマークになるのではないでしょうか。 2006年にNPO法人の認証を受け、2012年には認定NPOを取得しました。世論の高まりと共に賛同者も増え、既に会員数も二千を超えました。私自身も当初は夢のような話だと思っていましたが、今では予想よりも早く天守閣が再建されるのではないかと更に夢をふくらませております(笑)。 山田 観光という側面に加えて、江戸城再建はどのような波及効果が期待できるでしょうか。 太田 皇居東御苑の遺された台座の上に天守閣が再建されれば、日本再生の象徴として多くの方が訪れると考えられます。また、歴史的、文化的価値を有する江戸城の再建は、世界に類を見ない貴重な文化遺産の再生であり、後世への贈り物になるでしょう。 山田 江戸城再建は、江戸のスピリッツを具現化した日本人のシンボルにもなり得ると思います。太田会長は我々が江戸から学ぶのは、どのようなものだとお考えですか。 太田 一言でいえば「平和」に尽きると思います。日本人にとって最も悲惨で辛かった暗黒の戦国時代を経て、徳川家康が天下を治めたことにより、260年に渡る平和な時代がもたらされました。平和だったからこそ多様な思考や文化が生まれ、江戸文化が醸成され、現代の日本の礎が作られたのです。さらに我々は、その良き伝統や文化を継承しながら、常に変革する勇気を持つことが大事ではないでしょうか。日本橋には、この伝統と革新がバランス良く息づいていますね。 山田 文武両道に優れた素養をもつ道灌は、その才を妬まれて主君に謀殺されましたが、後の世の判官びいきの江戸っ子からはヒーローとして愛されましたし、今では歴女ファンも多いと伺っています(笑)。太田会長から見た道灌像を教えてください。 太田 主君の為に身を挺して働き、赫々たる戦果を挙げ評価が増すと共に、時勢を見る目のない主君から妬みを買うというのは、いつの世にもありますが、人間の本性が出た事件でした。サラリーマン生活が長かった私から見ると、このような話は現代の社会でも多々あります。その為、最近では道灌は多くの団塊の世代から、共感を持って迎えられております。 歴女の皆さんの知識力には感嘆しますが「賢人は歴史から学び、愚人は経験から学ぶ」という言葉の通り、道灌を含めた戦国武将の政治的、軍事的な歴史背景を広く勉強していただくと、困難に遭遇した際の指針や、今の時代にも通じる知恵と勇気を得ることができるのではないでしょうか。 山田 城下町としての江戸の中心は日本橋ですが、太田会長の日本橋のお気に入りのスポットは、どのようなところでしょうか。 太田 一番のお気に入りは「常磐橋」ですね。550年前に道灌が江戸城を造った当時は「常磐橋」という名は無く「高橋」と呼ばれていたようです。そこには、全国から豊富な物資が集まったという記録が文献に残っていますので、当時から賑わいの中心でした。私にとって、常磐橋周辺は研究する価値が多く、遠い時代に思いを馳せながら楽しめる有意義な場所です。 月に2回ほど書の稽古に通っている日本橋人形町周辺は、数え切れないほど粋でおいしい飲食店があり、稽古の後に仲間と晩酌するのが最高の楽しみですね(笑)。 山田 2012年9月28日(金)〜10月16日(火)に開催予定の日本橋美人博覧会実行委員会主催「第5回 EDO ART EXPO"Japan Beauty from Edo -Tokyo" 」では、日本橋を中心に名店、企業、ホテルや文化施設などがパビリオンとなり、江戸をテーマに伝統文化や歴史、美意識などに関わる展示を街ぐるみで行います。江戸城に関わる展示で、ご協力いただければと思います。
太田 「江戸城寛永度天守復元図」など、いろいろありますのでぜひ参画を検討させてください。江戸の伝統や文化を継承していく「日本橋美人」の活動は、年ごとにステップを上げていらっしゃると感じます。私も、この活動を支援する一助になれればと考えています。 山田 太田会長にとっての「日本橋美人」とは、どのような女性でしょうか。 太田 「日本橋美人」という言葉は、以前に中央区の矢田美英区長もおっしゃられていたように、とても美しく良い響きですので、徐々に全国に浸透して行くでしょう。1959年に発行された高木健夫の著書「東京の顔」の中に「日本橋は女ではじまり、女で続いている」という一文があります。つまり、商人の町として発展してきた日本橋の陰には、女性の大きな力が有ると述べられています。 「日本橋美人」は、そのような日本橋の庶民性、革新性、柔軟性などを背景としながら、時代と共に伝統と文化が加わり、更にそこに垢抜けした粋と気品が備わって誕生したのではないかと考えます。また、今のこの時代にいろいろと定義を決めてしまうよりも、後世の人が解釈を広げ、作り上げられる要素を残したらいいと思います。 山田 素晴らしいアドバイスを有難うございました。まさに歴史から学ぶ「日本橋美人」を目指し、心身ともに輝いていたいと思います。
ファッションポイント
春の山々を思わせるサーモンピンクの訪問着は、花びらでデザインした朧月が優しく楚々としています。吉祥文様に四季の花々を織り込んだ袋帯を、重ね衿と小物に利かせ色を使い、華やかさもプラスし、春をイメージしたコーディネイトです。 着付け:花影きもの塾 衣装協力:和Beauty HANAKAGE 撮影協力:ロイヤルパークホテル 撮 影:吉川信之 |
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