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長引く不況はまちづくりの様相を変えている。企業による大規模開発が相次いで完成していく一方で、地域が参画する開発はめっきり減ってきた。すでに晴海では1丁目開発がトリトンスクエアとして実現、新たな賑いを創出しているものの隣の2丁目ブロックでは、広い敷地を有する企業が土地を売却したり、独自に高層マンションを計画するなどの噂が流れた。一方、都は開発に先行して防潮堤建設の都市計画決定を急いでいて、地元住民の反発を買っている。また企業の動向に合せての区画整理事業に疑問の声も多い。そこで地元のマンション住民・ソフトタウン自治会(原田徳雄会長)と同晴海の住環境を守る会(二葉雅幸会長)から28日、要望書が提出され、さらに26日には月島再開発協議会(新川有一代表幹事)からも2丁目開発の促進を願う要望書が区に提出された。晴海の今後の開発に大きな影響を与えるだけに区と区議会の対応が注目されている。
護岸整備と区画整理 先行して都市計画 地元は反対の要望
幅50米の防潮堤
晴海防潮施設は昨年の「豊洲・晴海整備計画」の見直しのなかで明らかにされた。2丁目、4丁目と5丁目一部の護岸に防潮施設を設ける計画で、現護岸から70メートル沖を埋めて、そのうち50メートルにわたって防潮施設とする。水に親しめる岸辺になると同時に、埋立地を海に切り立った護岸にしておくと大地震のとき液状化現象などで護岸が海に放り出されることが阪神大震災で証明されたため。
計画では6月に関係区の住民等の意見を聞いたうえで、7月下旬の都市計画審議会で決定としている。
土地区画整理事業は規制緩和の法改正によって事業をすすめやすくなったことによって、大規模な所有地に分割されている場所で換地などを可能とするもの。土地所有者にとっては土地の売却もふくめて事業の展開が促進されるが、環境保全、交通アクセスの担保はとりにくい。
首都高晴海に反発
こうした2つの動き(防潮堤と区画整理事業)について地元住民の提出した要望書の冒頭において、次のようなことが「欠けている」と指摘している。
(1)晴海2丁目全体に調和のとれた美しい町並み形成の計画がない。
(2)区画整理の換地や土地の売却は検討中で未定。
(3)広域道路や護岸などのインフラ整備後の土地利用が未定である。
(4)はじめに晴海2丁目の再開発地区計画を作らなければ住民も参加できる良好なまちづくりにならない。
(5)晴海通り延伸による道路公害を防ぐ環境保全対策がない。首都高速晴海線による通過車両の増加が、沿道住民の住宅環境をさらに破壊する。そのための防止策もない。
(6)建築物は区画整理後に検討すると言うのでは、どんなまちづくりをするのか将来像が見えない。
首都高速晴海線は晴海通り<ホテル浦島横>を豊洲―有明へと延伸させ、ここにのせるもので、さらに環状2号線とで、いわば豊洲の新市場アクセスとして工事が進められている。地元には車両増と公害から反対の声は根強い。
いずれ、乱開発に
月島再開発協議会の要望書は、1丁目再開発との連動性を強調したうえで、民間企業の土地売却やマンション計画を放置するといずれ乱開発が進み、せっかくの1丁目開発を台なしにすると指摘。さらに東京都が財政ひっ迫を理由に港湾局用地の売却計画にも言及。まちづくりを指導する自治体としての無責任ぶりを糾弾している。
このところ都は品川や南千住の開発で住宅建設だけを容認して、まちづくり全体への先導役をとろうとしてない。広大な土地の売却による財政補てんをたどっている。
不況と都の財政難の流れにまかせていくと晴海の再開発は乱開発と交通の通過地に終りかねず、地元中央区と区議会の本腰を入れた対応が注目されている。
月島再開発協の要望
<主旨>晴海地区の再開発は1丁目から3丁目の住宅再整備に移行しようとしています。引き続き2丁目地区につきましても、晴海運河の護岸整備が具体化されるのと併行して、同地区の再開発が推進するよう強く要望します。
<理由>豊海、晴海再整備計画が改訂され、晴海運河の護岸整備が画定しました。晴海1丁目の再開発は、賑わいの拠点「トリトンスクエア」に生まれ変わり、東京の新しい名所となりました。この再開発が3丁目、2丁目、さらに4、5丁目へと連動していくものと期待を集めております。そうすることで晴海は21世紀の孫子の代へと引き継がれていくわけです。
ところが現下の不況が影響しているのか、民間地権者が独自に高層の分譲マンションを計画したり、あるいは所有地の売却を検討しているなど聞き及ぶに至り、2丁目再開発に危惧の念を抱いております。さらに、東京都港湾局も都の財政にひっ迫を理由に都有地の売却も検討している。
2丁目のリーダーたるべき東京都が責任放棄の挙に出ることは誠に無念の極みであります。晴海は1丁目から5丁目まで一体との考えのもとに再開発を始めたはずであります。各丁目のまちづくりが連動していくことが必要条件であります。もし2丁目の再開発がストップすると、1丁目の賑わいの拠点が単発に終わり、いずれさびれていくことすら予想されます。
以上のことから晴海2丁目については、晴海沖の護岸工事に合わせて、まちづくりのゾーニングなど早急にまとめる時期であり、その具体化に御協力のほど強く要望いたします。特に全体計画の決定を見ないうちに護岸・道路等の決定がされる事は断固反対申し上げます。
ソフトタウンの要望
<趣旨>一体的な共同開発のない、良好な住環境や魅力あるまちづくりに貢献しない都市計画、すなわち、まちづくりと土地利用の方針が示されず、道路、護岸等のインフラ整備を目的とする土地区画整理事業の実施と連動する晴海防潮施設の都市計画に反対して、白紙撤回を求めます。さらに、住環境を破壊する晴海通りに保全策を講じ、首都高速晴海線の中止を求める。
<理由> (1)2つの事業の都市計画は土地利用がすべて未定であり計画がない状態では、道路の付替えもできないはずだし、まちづくりの基本的骨格がない、正しいまちづくりの姿ではない。
(2)2つの事業の都市計画は「都市再生法」がらみで連動していることから、防潮堤施設の後背地に良好なまちづくりの計画がなければ、晴海防潮堤を作る必要はなくなる。
(3)2つの事業は晴海全体の住民を含めた一体的な将来像を形づくるまちづくりでなければならない。
(4)いま、まちづくりの全体的な優れた計画が作れないのであれば、急いで晴海2丁目の両事業をする必要はない。
(5)晴海防潮施設は、本来的に晴海2丁目のまちづくりに必要なインフラであるべきである。
(6)晴海通り延伸による道路公害の影響は、ソフトタウン晴海と近隣の沿道住民に対して健康の被害と住民環境の破壊をもたらす。よって、沿道住民に対する住宅環境悪化に対する具体的な保全対策を強く求める。
また、首都高速晴海線は、現在でも出入口や道路の取付けが決まっていない。さらに通過車両がいちぢるしく増加する。従って住環境をさらに悪化させる首都高晴海線の中止を要求する。
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