首都移転反対の総決起大会

 国会がいよいよ首都移転の場所を絞り込もうとしているというので、東京都、都議会ならびに東京都町会連合会の主催で、21日、東京国際フォーラムに3,000人が集まり、「首都移転断固反対総決起大会」が開かれた。石原知事は(1)官邸などの改築と整合性が立たない、(2)国民を無関心にしている秘密主義、(3)移転を前提にした委員会運営のアンフェアの三つについて問題をしぼりこみ「私の責任において党派をこえた反対運動をするのは当り前」と、檄をとばした。また主催者は、バブル経済たけなわのときの決定で、それを時代の変った今も移転というのは政治家の質に欠ける、候補地を絞り込む裏でまたぞろ利権がからんでいるといった厳しい意見も出された。自民党、民主党、公明党、共産党の代表(国会議員)もそれぞれ、移転の根拠はことごとく崩れているとして反対の立場を鮮明にした。大会の最後に緊急アピールを採択した。当日は区の幹部と区議会の代表(正副議長と企画総務委員の正副委員長)が参加したが、住民代表は参加しなかった。中央区の町会が東京都町会連合会に加入していないことが理由だが、区長会会長のおヒザ元から住民代表が参加しないことをいぶかしむる声もでている。



国会議員も反対に同調

 総決起大会は演壇の右側に国会議員、左手に都議会議員区市町村関係の代表らが並んで始まった。特別区会長の矢田区長も左手前に座った。
 主催者を代表して都議会の三田敏哉議長は「国会は5月中に三つの候補地を絞りこみいよいよ首都移転に出てこようとしている」として、今日までの経過を報告。石原知事になって「断固反対」の烽火しがあがり、都市再生こそが本来の国のあり方だと主張。「皆さんの総意を以って陳情しよう。きょうの意気ごみを絶対反対に結びつけたい」と挨拶した。
 石原知事は会場あふれる参加者に「本当にありがとう。大へん心づよい」と謝意を告げ、過日、国会に参考人としてよばれたときの主張三点を説明。(1)新官邸も出来、防衛庁も外務省も新しくして、議員会館も建て替計画があるのに首都機能を移転することとの整合性は誰も説明をできない。(2)国民のほとんどが無関心という秘密主義。(3)あくまでも移転を前提にしたアンフェア。「しかも首都には絶対必要条件である国際空港の議論もしない。都市工学的にも間違っている」、さらに、「首都移転はいずれとんでもない負担が国民にかかってくる。あの国鉄の放漫経営の負債(何十兆)はいまだ払ってないことを思い出していただきたい」とも指摘。
 最後に、「私の責任で、首都移転反対運動を党派をこえて進めることは当り前のことだ。首都は国の発展の要(かなめ)で、たしかに東京に欠点は多いが、その東京を世界に稀な首都に発展させる努力もしていく」と結んだ。
 各種団体代表の東京都トラック協会の浅井会長は中小企業の立場から、町会連合会の石川会長は住民代表の立場で「絶対反対」を主張。
 国会議員では自民党の八代英太、民主党の海江田万里、公明党の太田昭宏、共産党の緒方靖夫の各氏が挨拶。また神奈川県議会の久保寺議長は、「東京は400年にわたり行政文化の中心であり、一国の首都にふさわしい品格をそなえている。貴重な歴史を捨てて移転させる理由は何もない」と強調し、「都議会と連帯して反対をしていく」と立場を鮮明にした。
 応援メッセージとして牧伸二がウクレレ漫談で反対運動にエールを送った。緊急アピール(別掲)を採択して、終了した。政府国会への要請団を拍手で送り、頭に断固反対のハチ巻をして街頭行進に移動した。
 陳情団に国土交通省の扇千景大臣は「自分が(国会等移転)特別委員会の委員長なら(移転は)すぐに凍結よ。国民のためにならない」、錦畠民輔衆院議長は「候補地の絞り込みでは国会の権威を問われているが、5月中に候補地を絞り込めるか疑問」と語ったとマスコミ各紙が報道。この問題が凍結の方向にあるとの印象が強くなった。


緊急アピール

 現在、衆議院の国会等の移転に関する特別委員会は、都民・国民の目の届かない、いわば密室の中で、現在3カ所ある移転先候補地を一か所に絞り込むための最終的な検討作業に入っている。
 この特別委員会では、良識ある委員による移転反対論が展開されている一方で、移転先候補地の選定をめぐる様々な駆け引きが繰り広げられ、敗れた候補地のための手当ての方策まで議論されるなど、憂慮すべき状況が続いている。一方、650億円もの巨費を投じて先月末に新首相官邸が完成し、さらに国会議員会館の建え替え計画が進められている。
 引越しを本気で考える人がはたして住まいの建て替えを行うだろうか。国民の常識から見てかけ離れたこれら一連の動きは、政府・国会がこの問題に本気で取り組んでいない証左である。
 誰も本気で信じない「無理・無駄・無意味な首都移転」論議を、国会が今日もなお引きずっていることは、都民、国民にとって大きな不幸であり、損失でもある。
 21世紀を迎え、様々な国家的課題が山積するなかで、20兆円を超える莫大な費用を投じ、大規模な自然破壊を伴う首都移転に国民的な合意が形成されることはない。
 本日ここに結集した我々一同は、ご列席いただいたご来賓皆様のご支援を賜りながら、首都圏の3,300万人の国民並びに全国の良識ある各界各層とともに首都移転の白紙撤回を攻めて強く求める。