新富商栄会は15日の土曜日、日本印刷会館で、三島由紀夫の「橋づくし」にちなみ講演、朗読、橋めぐりの珍しいイベントを開催したところ会場は200名に及ぶ人たちで満席のにぎわい。参加者に、「橋づくし」文庫本が配られて、しかもそのカバーの表紙に鏑木清方の名作「新富町」をあしらい、裏表紙に橋づくしのコースをしるした特製のサービスも。
挨拶に立った会長の恩田和雄氏は「この企画は3年前からあたためてきました。ある作家は、新富町は銀座のチベットと言いますが、そんなことはなく、この町はとてもいい所で、きょうはとっくりと見てください」と挨拶。来賓の矢田区長は、橋づくしに中央区役所が暗いイメージと描かれているが「今は明るいのでご安心を」を強調。
講演は作家の井上明久氏。震災後に建てられた建物の多くは粋で芸に凝っていて見るべきものが多かったし、そういうものが戦災にあわずに残ったのが新富、明石町、築地だったが、バブル経済で次々とのっぺらぼうなビルに変わったことが残念と指摘。
三島については「彼は最後の一行が決まると小説が書けると言っているが、これは劇作家が故ではないか」、橋づくしについては「この作品には男性が登場しない。橋を渡る3人の若い娘に加えて、この土地をほとんど知らない女性を登場させた構成力によって読む人を魅きつけている」との見解を示した。
また朗読については「音読では得られない感性が得られる」「そうすることで新たなイマジネーションがわく。水がなくなってしまったが、いいものを良いとイメージして町を廻れば、水のない橋も生きかえるでしょう」。
NPO日本朗読人協会の石原広子さんらの朗読を耳にしたのち、70名に及ぶ人たちが新富−明石町−築地の橋めぐりを堪能した。 |