55人の聞き書き時代を切々と語る
中央区の区制施行60周年の記念事業として『中央区女性史いくつもの橋を渡って』が出版された。
2冊ケース入りの豪華本。通史と聞き書き集に分かれている。
編さんの目的について区は次のように説明している「女性は今までの歴史のなかでは表舞台に出ることは少なかったが、秘めた力でその時代を担ってきたことは事実。女性の視点から中央区の女性の生活史をとりまとめ、記録に残すことは歴史の検証にとどまらず、男女共同参画に向けた啓発資料として大きく寄与する。そこで、これまでの本区の女性の歩みを振り返り女性たちの活動の軌跡を掘り起こして書き残し、女性たちの暮らしや生き方の変化、活動の発展を探り未来への道すじとすることを目的として編さんした」
副題を「いくつもの橋を渡って」としたことについて、編さん委員会の編集責任者、江刺昭子さんは「これから読んでいただく物語が、橋と深くかかわりながら生きてきた暦だからです。先に歩いた女たちが積み重ねてきた暦の束を一枚ずつめくりながら、彼女たちの叡知と勇気をくみとり、明日に架ける橋のいしずえにしたいという願いもこめています」と説明。さらに「女にも男にも貫通している女性差別の構造を読みとっていただきたい」と願う。
通史は明治の西洋文明との出会いに始まり、各時代に活躍した女性たちを紹介し、その物語りを解きほぐしていて地域の特性も描き出す。
「聞き書き」は平成16年17年の2年度にわたって区内の女性55人に聞いた話をまとめた労作。語り手の年代は、明治生まれ2人、大正生まれ38名、昭和生まれ25名となっている。職業も多彩で、女性たちがそれぞれの地域で商いで職場で体験したことを率直に語っていて読む者を感動させる。語った女性と各テーマは次のとおり。
＜京橋＞好きな洋裁で身をたてる 秋元弘子／店と家族を守った母の教え 伊藤豪子／父に仕込まれた豆腐屋稼業 大渕和江／宝塚から編集者に 笠置八千代／空襲で三回も被災 仮谷豊子／坊主頭に、と言われ跡継ぎに 河井梅子／時代を読んで舵を切る 川島英子／母から娘へ、銀座十字屋 倉田 槙／八丁堀わがふるさと 黒河内澄子／念願の教員生活を終えて 櫻井玉江／芸能人も来たレストラン「ハワイ園」 澤佐久子／冬は鯛焼き、夏はかき氷 澤田照子／秀でた芸があってこそ芸者 武内愛子／天職は看護婦 竹内和泉／白木屋伝兵商店の妻として 中村高子／築地生れの築地育ち 野村和子／千円札に感じた新時代の到来 平柳喜和子／老舗バーの佳き日、戦後の受難 藤沢ヨシ子／『銀座百店』創刊から一〇〇号まで 堀江佳子／生涯を花と歩んで 松本きん／戦後文士の銀座の溜まり場 矢島一代／伊達巻、職人、昭和の築地 渡部容子
＜日本橋＞老舗の活性にかけた人生 井上真弓／働くのが好きで町工場へ 宇佐美芳子／なぜ芸者に、恨みもしたけど 大毛ハマ／代々の鎖をつなぐ 小沢愛子・上原都留子／貧しかった時代、恐慌と戦災 北野ふみ子／芸者衆の町で美容師三代目 小林千枝乃／戦争体験がトラウマ 須田浩代／下町の生活、表と裏 田中貞江／みんなの力で区議会へ 富永克子／人形町呉服商売あれこれ 中田保子・天野和子／まず木綿、三越呉服部の戦後 細井佳子／生命保険会社に三四年 武藤利子／歌い、書き、長谷川時雨讃 森下真理／窮すれば何とかって 守田好子／大陸の花嫁にあこがれて 柳田俊子／教師として中央区で歩む 大和裕子／楊枝屋の長女に生まれて 山本和子
＜月島＞漁師の天下、仲買の町 飯田郁江／ヘンテ先生の志を継いで 伊東愛子／夫ととも築いた電気商 岡崎キミ／近所のつながりが婦人運動へ 坂本静子／自らの役割を受け止めて 島本喜志／月島育ちで家庭科教師 富島房子／働きながら日舞の教師に 梨本千枝／月島もんじゃの街に 古澤利子
（発行部数＝2,000部▽価格3,400円▽別売りも可能、通史1,900円、聞き書き集1,500円▽販売方法＝区役所1階情報公開コーナー、女性センター「ブーケ21」で。全国書店で取り次ぎ販売▽ドメス出版）
問合せ＝女性センター、TEL5543-0651。 |
