4年に一度、区民の審判を受ける区長・区議選が15日に告示された。区議選には、6期目をめざす矢田よしひで氏と新人で共産党の推せんを受けた佐藤たつお氏が立候補。区議選は定員30に対して37名が立候補した。前回より2名多いが、現職28に対して新人は9人という内訳、現職の壁に新人がどこまで挑むかの闘いで、有権者が4年間で1万7千人も増えている現実から投票率の行方がカギを握りそうだ。中央区は昨年4月、念願の人口10万を達成した。同時に新しい行政課題にも直面した。従って今回の区長・区議選は「10万人都市の土台づくり」に向けて、その施策について区民の審判をあおぐことになりそう。その点では、区長選に立候補した2人の候補者が初のマニフェストを発表したことは、今後の区政をめぐる論点が鮮明となり、区民の判断への材料提供となっている。中央区は長年にわたる堅実な区政運営によって健全財政を維持している。その一方で国の三位一体政策で、中央区の人口増が必ずしもストレートに税収増につながらない新しい課題に直面している。人口の30代層が増えて子育て支援が急務となっているが、今後の財政の行方と応分の負担のかねあいも課題として浮上。さらに都知事選でも表面化した築地市場の移転問題。土壌汚染と同時に場外市場の行方が中央区にとっては喫緊の課題。こうした課題への指針が求められていくわけで、今回の区長・区議選を通して、各候補者の論点を見きわめ、1万7千人も増えた有権者がどう判断を下すか。22日の投票が終ると同時に開票。結果は午前1時ごろに判明の予定。
有権者1万7千人増
子育て支援充実 矢田候補
市場の移転反対 佐藤候補
6期目をめざす区長候補、矢田よしひで氏の選挙事務所は、かつて立石都議や深谷代議士が利用した所と同じ。
告示日の午前9時すぎ届出をすませた選挙カーが到着と同時に出発式が始まった。立石都議(選対本部長代行)が「頑張ろう」と檄をとばしたのち、保坂参議院議員が「中央区は全国が注目する自治体だ」と実績を評価。深谷代議士は朝湖運河など水辺活用に国も協力を決定と報告。中山前代義士は市場について「反対だけでなく柔軟さも合わせ持つ」と評価。矢田候補は、人口増で30台が増えて子育て支援をさらに推進するなど、すでに発表したマニフェストにもとづき、市場、まちづくりについて主張した。
選挙事務所=明石町2-1 TEL3545-8201
共産党推せんの新人、佐藤たつお氏は午前11時すぎ、月島西仲通りで区議候補のまりこ勝彦とペアで街頭演説を開催した。
佐藤氏は「市場移転反対」を前面にかかげ、食の安全を主張するとともに、区の提案している鮮魚マーケットについては、自ら仲卸業にたずさわった体験をもとに「商売はそんなに甘くない」と批判している。また裕福な中央区財政で、「もっと福祉を充実、交際費などを節約すべきだ」と提案、主張している。共産党の区議候補五人とタイアップして選挙戦を展開する。
選挙事務所=築地6-6-6 TEL3248-6681
過去5回の区長選得票
<昭和62年4月26日>
矢田 よしひで(無所属)22,170
六角 せいすけ(無所属)10,957
あだかわ 喜三(無所属) 3,773
<平成3年4月21日>
矢田 よしひで(無所属)28,481
いでぐち 史朗(無所属) 5,912
<平成7年4月23日>
矢田 よしひで(無所属)25,955
いでぐち 史朗(無所属) 5,536
<平成11年4月25日>
矢田 よしひで(無所属)27,077
佐々木 浩(無所属) 6,068
<平成15年4月27日>
矢田 よしひで(無所属)27,992
玉川 寛治(無所属) 5,773
区長候補の略歴
矢田 よしひで氏
昭和15年6月2日、新富町生れ。父親は都議会議員。京橋小、明正中、都立江北高校から慶応義塾大学法学部卒。米国ミズーリ州立大学でジャーナリズムを学び、42年、共同通信者に入社、46年から政治部。62年に中央区長に就任して以来、5期つとめる。平成13年には特別区長会の会長に就任。
昨年は念願の人口10万を達成し、都心に10万人口時代を復活させた。趣味は囲碁で5段の腕前。家庭は妻と長女で新富町に居住。娘は6月に結婚の予定。好きな言葉は「人生意気に感ず」「初心忘るべからず」
佐藤 たつお氏
昭和12年、中央区八重洲=旧槇町生まれ。区立築地小卒立教大学卒。昭和35年から平成9年まで、家業の築地市場青果仲卸従事、同青果卸売組合青年会長、全国同連合会長を歴任。家業の梅村屋は明治6年創業の老舗、西洋野菜を扱う先駆けとして有名。実兄の昌男氏は元区議。平成11年から18年まで農民運動全国連合会に勤務。
現在、品川区民オンブズマンの会代表で区議会政調費を摘発して有名に。趣味はコーラス、連珠、釣りにウォーキング。高校時代はバレーボールで全国大会に出場。家族は妻と三男。
マニフェスト発表
区長選で両候補
今回の区長選で両候補ともにマニフェストを明らかにして注目を集めている。人口10万時代のカジとりが争点の選挙だけに、有識者の判断に格好の材料になると見られている。
矢田よしひで
6つの約束
(1)すべての子育て家庭を
応援します。
◇「子ども家庭支援センター」を中心に子育てしやすいまちを
◇出産支援をいっそう充実・強化します
◇保育園・幼稚園の待機者ゼロを実現します
(2)教育環境を改善します
◇学力向上、「いじめ」ゼロを目指し、生き生きした学校にします
◇全小中学校の建て替え改修を10年計画で実施学校教育を充実させ地域の核・防犯拠点としての機能を高めます
◇スクールバスを導入し子どもの安全・通学区域の弾力化や教育施設の活用を図ります
◇中央図書館を新たに整備します
(3)安心して暮らせるまちにします
◇高齢者や障害者のために区の独自施策を実施し、利用しやすい介護・福祉 あたたかいサービスを提供します
◇70歳就労社会のしくみをつくり 高齢者の地域活動を促進します
(4)地球を大切にします
◇温室効果ガス削減のため省エネ、資源の循環を促進します
◇緑の総量を増やし環境保全のシンボルとして憩いの森をつくります
(5)食文化の中央区を守ります
◇築地市場移転断固反対です。万が一、市場移転なら“築地ブランド”を生かした新しい鮮魚マーケットを開設します
(6)世界に誇れるまちに
◇五街道の基点である名橋「日本橋」上空の高速道路撤去を促進し、陸の表玄関である東京駅前を整備します
◇下町情緒豊かな「水の都中央区」を再生
佐藤プラン
3つの転換
<現区長は築地市場跡地をメディアセンターにするなど大型開発をすすめるオリンピック計画を歓迎しています。これでは築地市場を守ることはできません>
◎23区トップレベルの財政力はくらし第1に
(1)区立保育園の増設と区独自の出産手当(30万円)新設
(2)特養ホームの新設(待機者200名)と介護保険料減免
(3)応益負担で障がい者の自立を応援
◎超高層ビル乱立から、住民本意の町づくりへ
(1)超高層ビル乱立の無計画な町づくりを改め、住民参加で居住、地域環境を守る「まちづくり条約」を制定
(2)跡地を大企業の大規模開発に売り渡す築地市場移転を許さず、「食の安全」と地域経済を守る
(3)公害をまきちらす環2道路の「地上化」反対
◎情報公開を徹底、ガラス張り区政でムダをなくす
(1)形だけの情報公開を改め、税金のムダづかいをなくす
(2)区長退職金は廃止
投票率に注目
当落線に影響 区議選
前回区議選では8人もの現職議員が退任したのに比べて、今回の退職は2人だけで現職28人が立候補。対する新人は9人という構図になった。現職の重みを考慮すると新人には厳しい闘いとなりそうだ。
ところが、有権者は4年間で1万7千人も増えていて、9万人にまで2千余名。新住民の増加によるもので、この点で投票率の行方が当落ラインを左右することに。
前回、無名の新人・田村氏が自民党の公認新人をおさえて当選し、注目を集めた。投票率が50%を割ったなかでの結果だけに現職議員も驚いた結果だった。
自民党は新人1人を公認、民主党も公認・推せんの現職に新人1人を公認。直前になって立候補を決意した月島の医師からの協力要請については断っている。また自民党は昨年から要請のあった29歳の青年については公認を与えなかった。
こうした現職の壁を破るのは投票率アップのみ。投票率が60%に上のせされていくと現職といえども安閑とはしていられない。 |