立石晴康都議の主宰する「アジア太平洋経済研究会」は、世界の各都市を年に一度訪れて特色 ある街づくりなどを視察している。今年は7月23日（日）から28日（金）までの6日間、北 欧のスウェーデンを視察した。視察の参加者は26人。北欧の出入口コペンハーゲン（デンマー ク）からスウェーデンの首都ストックホルム、中部の海岸沿いにあるウメオ、さらに北に位置す るストルーマンの三都市を訪問した。森と湖の国と言われるように、はてしない森林におおわれ た国土は、日本の山国とはまたちがった豊かな自然に恵まれている。その一方で、夏は夜の11 時まで昼間と同じ明るさの白夜で、逆に冬になると太陽はほとんど見えない日が続き、大地は雪 におおわれ、湖は一面氷と化す厳しい季節に一変するという。気温は北のストルーマンでマイナ ス30度に達する。このスウェーデンの夏に体験したいくつかの事例を紹介してみよう。


岩石むき出し

　スウェーデンの国土は約40万平方キロと広大にもかかわらず人口は約905万人。降水量はス トックホルムで東京の約半分で、訪れた7月末は天候にも恵まれ、気温は26度ぐらいで湿度が 低いので、しのぎやすかった。
　ストックホルムには王宮を中心に古い建物がひしめいており、第二次大戦の爆撃にもあってな いので古風な街なみで、いわゆる超高層ビルは目にしなかった。
　地下鉄に案内されて驚いたのは、岩石がむき出しのままであったこと。地下鉄といえばシール ドで掘ったのち、周囲はコンクリートで固めないと、地震の多い日本では維持できない。岩石む き出しには理由があった。ヨーロッパと同じで国土全体が巨大な岩で固まっているので地震が発 生しないこと。かの有名なノーベルが登場するまで、ストックホルムの街はいたるところ巨大な 岩石があちこちに表出していたという。黒色火薬とニトログリセリンを調合することでノーベル がダイナマイトを発明したのち、これら岩石は一掃され、地下鉄も容易に掘ることが出来た。岩 石むき出しの地下鉄はこのノーベルの功績を記念するものであると説明があった。
　地下鉄といえば、出入口を公園の中央に設置しようとした時、そこに古い巨木が立っていて、 それを切るのは惜しみないと市民が反対し出入口は変更された。この時、新しい出入口の地下に は巨木が切られた場合のオブジェが置かれていて、この国の人たちの自然への思い入れを痛感す ることができた。
　ストックホルム滞在二日目の夜、市庁舎の地下レストランで「ノーベルディナー」を味わう機 会に恵まれた。ノーベル賞を受賞した人たちと同じメニューをいただけるという企画。このとき、 視察団の1人がパンを食べようとしてもバターをさがすが置いてないので質すと、最初のディ ナーから出してないとのこと。なぜと聞いても「わからない」の答だった。
　ディナーにはゲストが同席した。日本のテレビでも紹介された尺八ソリストのリンデルさん。 坊主頭のハカマ姿で見事な演奏を披露。同行したピアニストも巧みに琴の音色を繰りだして、宮 城道也の名曲を聞かせてくれ、思わぬプレゼントに一行は忘れがたい一時をすごせた。
　ちなみにノーベルディナーのメニューは次のとおり。前菜＝赤カブとヤギのチーズのタルト、 ホタテと欧州伊勢エビのマリネ、ビネグレットソース添え▽主菜＝仔ジカのロースト、苔桃のチ ャッネ、シナモン風味ソース、根菜ソテー、ラートジャガイモ添え▽デザート＝洋梨とシャンパ ンのシャーベット、洋梨をのせたチョコレート、バニラ風味のババロア、洋梨キャラメルソース 添え。（なおメニューは日本語で印刷されテーブルに置かれていた）