東京都は石原知事を先頭に2度目のオリンピック誘致で動き出し、6月30日には計画概要を明らかにした。JOCは8月末に決定を下すことにしているが、福岡市も名のり出ていて、情勢は予断を許さないという。都の計画では中央区に晴海5丁目のメーンスタジアム、築地市場跡地にメディアセンターと2つの主要会場を予定している。また浜離宮はトライアスロンの会場ともなる。オリンピック招致となると中央区は重大な責務を負う。さらに環状2号線計画は最終案が提示され、大詰めを迎えた。そこで、この主要2課題について立石晴康都議に考えていることについてインタビューした。
−東京都がオリンピック誘致に名のりをあげ、先月30日に計画内容を明らかにしましたが、その目的や意義についてはどのように考えていますか。
「石原知事は、アジアで第2回目のオリンピックをした所はないと言っています。そういう意味では、昭和39年にオリンピックを開催した東京が60年の平和が続く都市の熟成というものを世界のメディアを通して世界の人々に「平和が続けば街は栄える」
−そのメッセージを見せることに意義があると思う。コンパクトなオリンピックをやることによって、且つては大変なお金をかけて急激な復興を、今の北京のように自転車の大群をなくす急激な投資を見せつける、と同じように、戦争がなかったことによって都市がきちっと熟成していくんだと、しかも環境のオリンピックとしてこれだけのことが出来るんだ−そういう目的を石原知事は持っていると思います」
「20世紀の戦争による被害は誰でもわかっている。にもかかわらず現在でも戦争は続いているわけですから、そんな馬鹿々々しいことはもうやめよう、競うべきは「こっちの方がより幸せになる」という都市間競争、これが21世紀の課題ではないのか。環境にすぐれた町を作れば、人々がどれだけ幸せに暮らしていけるのか、ということを競争し合うことこそ21世紀の課題なんだということを石原知事はメッセージで言いたいことでしょうね。議会の所信表明を聞いていると、そういうことわかりますね。それと同時に、日本人が自信を失い、夢と希望を失った今、そこに新たにいい意味での都市間競争によって世界の環境にマッチした町を作って、熟成したものを東京から発信し、閉塞感をぶち破ろう、夢が人生を変えるように、都市の夢が世界の人々に大きなメッセージを与えていく、それは戦争をなくして努力することによって出来るんだ、ということですね。私たちが訪れたフランスのストラスブールは、戦争のたびにフランスとドイツに交互に占領された。その経験からEUの本部が置かれているんです。新しい21世紀を迎えるオリンピックは、土建屋的、都市開発的な意味でのオリンピックではないし、北京的オリンピックでもない。コンパクトにして、もてなしの心、世界中の人に素晴らしい日本人の特性を発信していこう、そういうことですね」
−中央区にメーンスタジアムとメディアセンターの2つの会場を設けることにして、晴海には10万人の人が集まるといいますが、果たしてそれだけのインフラをまかなえるのかという疑問も出ていますが。
「環状部の未完成が都心への車の集中を促しているわけです。環状2号、3号、6号線や山手通り、まもなく完成する圏央道とか外環道、これはオリンピックが来ようが来まいが都市の熟成の度合いですよね。と同時に水辺循環をよくして素晴しい町にということもおこってこなきゃいけない。そういう大きな流れになっていけば、LRT(路面電車)で東京駅から銀座を抜けて築地、勝どき、豊海、晴海とビッグサイトに結んでいく。皆んなよく分かってないけどいわば横に動くエレベーターというような考え方でいいんじゃないですか、上り、下り往復の。そうすれば経営的にも成り立ちますよ。ただそれを昔のイメージで、単線のものがのこのこ走ったって、それは10万人の移動に機能するもんではないだろうし。それから大江戸線の勝どき駅。次の列車が入っても前の列車の客がはき切れないうちに、あふれてしまう。今でさえ危険ですから、勝どき6丁目方面に、ちょうど日本橋の地下道のように、コンコースをのばして、同じように晴海通りを地下道でトリトンまで引っ張っていく、銀座通りのコンコースのようにね。大結節点になると思いますよ。それから浜離宮がトライアスロンの発着点になるので泳ぐことができる状態にもっていく。こうした大きなトレンドがあることは中央区には非常にいいことだと思います。古い町並みに郷愁を感じてる我々としては、築地が移転しちゃって出来るのかという一抹の不安はある。こうなった以上は築地ブランドと築地ビジョンを生かして、町のブランド・食の文化の発信基地になる、その補助的役割が豊洲だと、ぼくは理解している。区議会もそういう考えで築地ビジョンをとらえてるようです」
−オリンピックの概要版を見るとメディアセンターの予想図に築地ビジョンの場所はないんじゃないかと区議会でも指摘されていますが、そのあたりは大丈夫なんでしょうか。
「6月30日に概要版を出すという、とり急いだことで詳細各論にはまだ入ってないと思うんですね。いわゆる昭和39年のオリンピックとは違う熟成した町を見てもらうという意味では、建築家ひとつとっても、丹下健三さんの開発途上の町から、安藤忠雄さんだから建築家の個性からみても、築地ブランドを生かしたものを考えていると思いますよ。ま、時代が変わったという見方をするべきじゃないかな」
−環状2号線の最終案が都から提示され、勝どきの高架案に反発が多いが、このあたりについてどう考えていますか。
「去年の定例都議会で質問しているように、素案の地下案でやるべきだ。シールド工法も改良されて経費もそれほど違わないんです。冷静にそれはそれとして考えたとき、果たして、移転が決定してしまったわけだから、高架にしたとしても町との整合性のある形にすべきである。今の、エレベータもない、雨漏りもする、手すりも古いサッシを使い耐震性も低い、そういう都営住宅を墨田工業高校の跡地に移して、その跡地を新たなまちづくりに使う。今ある中央官庁の官舎は、都心3区が変えていくという政府の方針があるのだから、そこを皆んなの広場や公園に変える都市計画に改変していくべきだろう。つまり本来は町は道路があって出来るものだから町の中にある勝どきは、今度は道路と共に再編整備して、安全で快適で環境にやさしい町に作っていくべきだ。それは各論の中で、「おれの家の前にヘンなもの作るな」とか「ここは公園にしよう」とかこれからやるべきことではないか。ゴールドコーストは環2が高架と想定しています。ただ気の毒なのは既に建っているマンション群と都営団地はもう少し手を加えて早急に再編整備が必要ですね」
「墨田工業高校の分校跡地は、芸術アートセンターにするという生活文化局の決定がすでにあったんです。それはとんでもないと、環2が高架になるなら都営住宅の皆さんが犠牲になるわけにいかないから、1回で引っ越しがすむようにすべきと主張したんです。全員協議会の2、3日前に都市計画局長が「生活文化局がアートプラザで指定しているので、立石さんから言ってくれ」と言うので、生活文化局長と会ったところ、適当な所を見つけようということで変更してくれたんです」
「風向きということから、地域が犠牲になるということではなくて、風吹けば水辺の景観を良くし、風に向かって風を利用して活力ある、いい町を作っていくべきだ−自分はそう思っています」
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