日本橋川上空の高速道撤去については小泉総理のお声がかりで有識者会議が発足し、検討の結果を12日に発表。これによると「首都高を地下に移転して、日本橋の空を復活する」との手法で完成は10年以内としている。一方、中央区は独自に日本橋川の再生に向けての方策を求めて、昨年10月に学識経験者(座長=伊藤ジ、委員=黒川洸、大西隆の3氏)による委員会を設立、4回にわたる検討を経て区への提言を今年3月にしている。これを受けて区は、(1)周辺開発との連携による容積移転や権利移転の手法を確立、国等に提示して働きかける。(2)日本橋川沿い街区についてモデル地区を選定し、川沿いのオープンスペース化に向けた事例検討を行うこれら2点について、9月を目途に行われている国の検討状況と歩調を合わせていく、との方向を明らかにしている。20世紀の「負の遺産」を返上する世紀の仕事はいよいよ具体化に入ってきたといえる。学識経験者の検討会からの提言を全文紹介する。
学経委員会が区に提言
まちづくりモデル
東京駅は、東京の玄関口として国内交流の拠点であるばかりでなく、成田や羽田を通じて国際交流の拠点でもある。また、日本橋は、全国道路の起点であり、日本橋川を利用した舟運もあわせ、江戸時代から物資や人の交流の中心であった。
2つの重要な拠点を有する東京駅前・日本橋地区は、歴史的にも経済・商業・文化の中心地であったが、現在ではその拠点を活かした役割を十分に果たしているとはいえない。また、日本橋川も上空を首都高速道路に覆われ、川岸には建物が建ち並ぶなど水辺の環境としては良いものになっていない。
こうした状況に対して、20世紀の“負の遺産”ともいうべき「日本橋川上空の首都高速道路」の移設にあわせ日本橋川の水辺環境を再生するとともに、地域の歴史と文化を活かしたまちづくりを行うことは、日本文化・環境・歴史を重視する国であることを世界に向け広く発信する絶好の機会となる。こうした機会をとらえて、21世紀の道路・川・まちづくりのモデルを示すためにも、提言したまちづくりの実現に向けて公共・民間が一体となって取組むべきである。
次世代型の都心を
次世代型都心の形成に向け高度な業務機能の集績とともに、文化・潤い・環境などをふくめた総合的な都市機能の集績が必要である。
特に、東京駅地区は、日本一利便の高い立地特性を生かして高度な業務・交流機能を集積させるグランドセントラルステーションと位置付けるとともに、日本の玄関口である東京駅や当地区が備えるべき交通機能や交流機能を拡充・再編すべきである。
また、日本橋地区では、日本橋川の両岸に緑地や低層店舗を備えた潤い空間を再生し伝統と革新の融合した文化・環境ゾーンとして整備すべきである。
これら拠点が通りの軸や歩行者ネットワークで有機的につながり、一体的に整備されることにより初めて、次世代型の都心が実現する。
実現に向けては、東京駅前をできる限り高度利用しながら都市構造を再編し、これらと連動して日本橋川河岸にオープンスペースを確保するという整備手法が必要となる。
補償費限りなく0
都市構造の再編には公共と民間の連携が不可欠である。何よりも、まず、地方公共団体である中央区や地元が、首都高速道路移設に向けた第1歩を踏み出すことが重要である。
中央区は、日本橋川河岸のオープンスペース化を先行的に進めていくべきである。これにより首都高速道路移設に伴う河岸用地買収補償費を限りなくゼロに近づけることができる。これに対して当該地区地権者はもちろんのこと周辺の地権者も含めて、地元地域が積極的に協力すべきである。
しかしながら、首都高速道路の移設には多大な費用を要し、それでもなお、税金の投入は不可欠である。国民のコンセンサスを得て、国と地方公共団体、公共と民間(民間企業・地元地権者等)がそれぞれ必要な役割を果たすことで初めて実現が可能となる。
また、まちづくりの実現に向けては、制度改正も含め従来手法にとらわれない、ダイナミックな都市計画手法の確立が不可欠であることから、国も全面的にバックアップするべきである。
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