区議会は9月28日の本会議で全会一致で「都区財政調整主要五課題の解決に関する決議」を採択した。平成12年に都区制度改革に向けて解決すべき課題を5点にしぼりこんで都区双方の話し合いが進められてきた。しかし、今年7月の都区検討会は、合意に至ることはできず、むしろ双方の見解はへだたったまま。採択された決議においては、その原因を「本来府県財源で行うべき政令指定都市の事務についても、調整三税等の大都市財源を充てる」といった現行法制度を逸脱する考えに立つ東京都にあると批難している。地方自治の時代に逆行する東京都と、念願の5つの課題を求める特別区の結論は年内にと迫っている。
自治確立へ財源保障
12年に決めたこと
平成12年の改革は次のような内容のものだった。
◇都を「広域の地方公共団体」、23区を「基礎的な地方公団体」と認定する。
◇23区の事務機能を拡充するために、都区の役割分担の原則を定め、清掃事業を都から23区へ移管、など。
◇23区の財政自主権の強化のために、都区の役割分担に応じた財源配分の原則を法に定める。
こうした制度改革により、都区の役割分担の原則が法定され、都が行う市町村義務の範囲も規定された。
しかし、現実には、都が行う「市町村義務」(区民税の具体的な使い方)が、いまだ明確になっていないために、「都区の役割分担」「財源配分の確立」という、制度改革の根幹をなす部分が未整理な状態。また清掃事業の財源の一部が引き継がれていないなど、改革はいまだに未完の状態にある。
残された課題とは
残された5つの課題とは次のような内容である。
<役割分担と財源配分>市町村の財源には市町村税、府県事務の財源には府県税が当てられている。このため、市町村民税の都区間配分を決めるためには、都が行う「市町村事務」を明確化する必要がある。
<清掃関連費の取扱い>平成12年に都から23区へ移管された清掃事業の経費は、移管時に2,032億円。しかし1,287億の財源しか特別区に移されていない。都が建設した清掃工場の公債償還費等、残り745億円は、移管後の特例対応として、都の報行に委ねられているものの、この財源の取扱いを決める必要がある。
<小中学校の改築費>校舎の耐要年数は50年といわれ、今後20年間で改築時期を迎える小中学校は900校。しかし、現在23区の需要としている財源では、およそ140校しか改築できない。
<都市計画税の配分>まちづくりの基盤を整備する都市計画事業は、都区が分担している。23区の事業の財源には都市計画税を原資とする都市計画交付金が都から交付されている。ところが、その交付金額は、およそ都区の事業実績の割合に見合わない。
<財源配分の変更>平成12年度以降、児童扶養手当事務の都から23区への移管等があった。しかし、結果として、これまで財源配分の変更は行われていない。今後は、大幅な役割分担の変更や税財政制度の改正があった場合、適切な財源配分の見直しが必要。
区議会の決議
中央区議会は、平成12年の都区制度改革の際に東京都と特別区の間で確認した都区財政調整主要五課題につき、平成16年11月には「都区財政調整主要5課題の早期解決に関する決議」を行うなど特別区議会議長会及び特別区長会と連携して、その早期解決に取り組んできた。
しかし、本年7月の都区財政調整会議で確認された都区検討会の結果は、すべての課題について都と区の前向きな合意点が見出せず、大きな乖離のある都区双方の見解を併記するにとどまった。この原因は、本来府県財源で行うべき政令指定都市の事務についても、調整三税の大都市財源を充てるという現行法制度を逸脱する考え方を示すなど、5課題の趣旨に即した解決をことごとく否定するかのような東京都の変わらぬ姿勢にある。
特別区は、首都東京都を構成する基礎的自治体として、全国唯一の都区制度の下、互いに連携協調し、都と協力しながら大都市行政を担ってきた。今回の協議における都の対応は、これまで築き上げてきた特別区と都の信頼関係を踏みにじるものであり、誠に遺憾である。
主要5課題の解決において特別区がめざすものは、都区制度改革により法制度上確立した都区の役割分担原則に則った都区関係を実現し、住民に対する行政責任の明確化を図ることである。残された協議時間は、わすかである。中央区議会は区民の立場から主要5課題の全面的な解決をめざし、左記の項目の実現に向けて不退転の決意で取り組むことをここに表明する。
(1)政令指定都市が行う事務等法令上明確な府県事務の取り下げをはじめ、法に定める原則に則った都が行う大都市事務の整理
(2)清掃関連経費の財源として都に残した745億円の特別区への移転
(3)間近に迫る小中学校改築需要急増に現実的に対応できる財源の確保
(4)都区の都市計画事業の実施状況に見合った都市計画交付金の配布
(5)三位一体改革の影響等も含めた都区財政調整配分割合の拡充
(6)法の原則に沿った都区制度の運用の構築
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