中央区は規制緩和によってマンションが次々と建ち、人口増に貢献、区が目標とかかげる10万人も目前となった。区内でマンションが建つようになったのは、昭和40年ごろからで、いわゆる集合住宅の耐久年数から建て替えの時期を迎える建築物も少くないとみられる。また急増しているマンションの管理や居住形態の状況は十分に把握されておらず、このため既存の住民や町会との関係もスムーズに展開されていない。そこで区は、その実態について昨年7月から今年3月までに調査を実施した。調査内容は、分譲マンションのストック調査と管理実態調査の2種類。ストック調査は昨年7月現在のリストを作成。実態調査は、そのリストに基づいて管理組合に対して住居状況や管理運営、修繕工事などを調査。570件の対象に回答は186件、32.6%の回答率だった。調査結果についての区のまとめと、自由回答の主なものを掲載した。
多様な規模と用途
<規模や用途>区内のマンションは、小規模で住戸数が少ないマンションや大規模な超高層マンション、住居商業複合型のマンションなど、実に多様である。また、都心における社会事情や居生者の生活スタイルを反映し、住戸の賃貸化や事務所等への転用が行われており、個々のマンションにおける居住事情や管理事情は一様でなく、「管理組合」の運営に関わる課題も少なくないと考えられる。
<単身者向け>区内のマンションのうち、単身者向けのマンション(1戸当たり平均占有面積=30平方メートル未満)が件数ベースで、住居専用マンションの約32%を占めている。また、近年マンションの新規供給が増加しているが、区の指導要綱などの規制により単身者向けマンションの供給は減少傾向にある。
<居住者の交流>100戸未満の中小規模マンションが多いため、「集会室等」を設置しているマンションは約一割に過ぎず、居住者同士の交流が希薄である。今後は居住者同士の交流はもちろんのこと、管理組合を通じ、居住者が町会や地域コミュニティと交流できるよう環境づくりを積極的に図っていく必要がある。
管理組合の課題
<高齢化や賃貸の増加>マンション住戸の所有者居住率は平均約60%、住戸の賃貸化率は平均約38%であり、今後心配なこととして「居住者の高齢化」や「賃貸住戸の増加」が多くあげられており管理組合の弱体化が懸念される。
<運営上の課題>住戸数が30戸未満の小規模なマンションや、築20年以上経過したマンションでは、理事会を開催していない割合や、長期修繕計画を作成していない割合が高い。これらのことから管理組合の主体的な活動に対して、必要な情報の提供や相談体制の充実、管理アドバイザー制度の利用促進等を図ることにより、管理組合の適正な運営を支援していく必要がある。
老朽化への対応
<経年劣化の防止>管理組合が今後優先的に取り組むこととして「建物等の経年劣化の防止」が特に多くあげられている。しかし、長期修繕計画の作成率は約65%で、修繕積立金額が低いなど、準備が不十分なケースもある。
<築30年以上が増加>現在、築30以上のマンションは34件だが、5年後には90件、10年後には217件に増加すると見込まれる。このため、中・長期的には設備を含めた大規模な修繕・改修や建替えの検討を要するマンションが増えると予想される。このため、計画修繕調査費助成や建替え・改修アドバイザー制度利用助成など、区の助成制度の活用を促進するとともに、情報提供の充実を図ることにより、計画修繕の取り組みや区分所有者の合意の円滑化を進める必要がある。
マンション住民が税金や町会に意見
今回の実態調査では自由記入を設けており、貴重な提案や意見が寄せられた。主なものは次の通り。
<居住・定住>マンションに住み続けるには固定資産税の負担が大きい。税の減免等があれば住みやすい▽単身の入居者やセカンドハウス等に利用している所有者が多く、管理に無関心な人が多い▽単身者向け物件は入居者や地域との接点がなく、自治ができないので適切な規制等の対策を望む。
<管理組合>定住型でないため建物や住居への愛着がないなど管理運営が難しい▽区分所有者が無関心で、役員のなり手がいない▽役員は、セミナー参加、相談窓口などで勉強しないと務まらない。
<大規模修繕>長期修繕計画の作成や実施については、専門家による適切な評価、アドバイスがほしい▽築年が経過しているため修繕工事が多く資金調達で困っている。
<建替え・まちづくり>周辺の再開発と並行して、マンションの建替えに行政の積極的な対策を望む▽地域の再開発について、事業の早い段階から行政の連絡や説明を行ってほしい。
<防災・防犯>住民用の防災・震災マニュアルの提供や防災用品(ヘルメット等)の支給を望む▽区内の防犯情報(危険情報)の共有をしたい。
<住民参加・町会>旧来の町会による自主運営に頼り過ぎている。町会からの案内も少ない▽まちづくりや地域参加の連絡・対応が遅く、十分に行われていない▽防災等の見地から、分譲・賃貸マンション居住者の町会など地域社会への参加を望む。
<管理等の相談・支援>突発的に必要な修繕工事等の費用の助成を充実させてほしい▽屋上緑化や植栽への補助により、区の景観や環境改善を助成してほしい▽中小マンションに対し、ガス引込み管の更生工事への補助を検討してほしい▽管理業者とのトラブルが多い。管理会社の情報や良い管理会社を知りたい▽管理組合の交流、情報交換などがしたい。交流会の内容(結果)を会員に知らせてほしい。
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