家庭・企業・子ども・地域の連勝で
世界に相変らず国と国との争いごとは絶えることなく、イラク戦争を中心に紛争が相次いでいる。その一方で、いま注目を集めている課題が地球そのものの存亡。地球の温暖化が警告されて久しいが、同時に自然界を支えてきた生態形があらゆる所で破壊され、絶滅していく生物が相次いでいる。同時に各地の砂漠化の進行も深刻で川の枯れる事件も相次ぐ。昨年の台風惨過や地震も地球温暖化と無関係でないとする説もある。こうした中、中央区で環境問題に母親、主婦の目で取り組んできたグループがいる。中央区環境保全ネットワークという組織で、企業も加わって活発な活動を展開。11月の環境まつりは月島の小学校で開かれ、多くの親子づれが参加して注目された。行政も区民の自主的な動きに注目しており、連携・協働の道を検討している。このネットワークで活躍している3人の女性に本紙主催の新春座談会に登場願い、矢田区長と共に大いに話し合っていただいた。環境問題を解決していく出発点は家庭と子供にあるという点では一致し、企業・団体との連携で幅広く展開していこうと確認し合った。今年2月から京都議定書が発効するも、国の対立がここにも生じ、先が思いやられる。環境はまず身近なところからの視点をお汲みとりいただければ幸いです。(文責・本紙編集)
喜納 愛子さん
東京理科大学卒。三菱鉛筆で研究開発。消費者友の会副会長。平成14年、環境保全ネットワークを設立。省エネ普及指導委員。昨年から女性センター・ブーケ21の館長。
篠原 良子さん
共立女子大学卒業。第4回国連世界女性会議ワークショップ。中央区環境保全ネットワーク代表。都環境学習リーダー。更生保護女性会の理事で社明運動に尽力。
川名 一榮さん
明治薬科大学卒。都衛生研究所を歴任。在宅介護、ケアマネージャーでも活躍。女性ネットワーク会長。隅田川市民交流会。リサイクル紅の会長。夫と川名薬局を経営。
矢田 美英区長
慶応義塾大学、ミズーリ州立大学卒。共同通信政治部記者を経て昭和62年から中央区長。平成13年から15年、区長会会長を歴任。父親は元都議会議員。新富町在住。
都の研修をきっかけに横の連携
環境ネットワークとして活発な活動をしておられますが、環境問題にとり組まれることになったきっかけ、動機についてお聞かせください
喜 納 環境問題が産業公害型から、ダイオキシンとか有害化学物質による環境汚染、自動車公害など通常の事業活動や一般の人々の日常生活を発生因とする「環境への付加」が指摘されるようになりました。こうしたなか、平成7年に第1回「東京環境保全環境委員会」が発足し、その委員となりました。平成10年に中央区の環境保全行動計画の作成委員となって、中央区の環境問題に直面することになりました。当時、中央区の昼間人口、在勤者が在住者の10倍もあり、中央区の環境問題は在勤者の協力がないと解決しないことに気付きまして、平成10年の行動計画には「区民、民間団体、事業者、在勤者が区の重要なパートナーシップである」と明記されています。一方、平成13年に、都民と都の環境行政をつないでいます都環境保全委員会では地域集会が廃止となりまして、区民都民としての私たちの意見が行政には届かなくなってしまいました。そんな中で、区内で日ごろから環境保全に取り組んでいる在勤、在住の個人、民間団体、事業者の皆さんで横の結びつきであるネットワークの必要性がたかまって、平成14年1月に「中央区環境保全ネットワーク」が設立しました。
篠 原 平成7年に中央区の推せんで世界女性会議の東京都視察団に入りまして、北京会議に出席しました。第4回国連世界女性会議で、そのとき「女性の24時間」ということでワークショップ(研究集会)をしてまいりました。「ジェンダーと環境」に参加して、すごく女性問題も大切なんですけれど、世界の環境ということを目のあたりに、ナマの声を聞いたときに環境ということがすごく心に残って帰ってきました。女性の声をあげていかなければ、なかなかいろんなことが変わっていかない時代だったので、女性問題のほうを中心に活動していきたいんですけれど、やっぱり自分も小さい頃から喘息があって公害問題に興味あり、環境について自分なりに情報を集めているところに、中央区の環境ネットワークをたちあげるプロジェクトの一人にならないかという話をいただきましたので、これは何かしでもやっていきたい、ということが今現在に至るきっかけで、今に至っています。
川 名 大学時代に薬科大学だったんで、生命科学とか微量分析にすごく興味がありました。卒業してから東京都衛生研究所の中で、化粧品の中に含まれているヒソとか重金属、それから食品から出るフェノルや発ガン性物質などを分析してました。結婚を機にそういうところから遠ざかってしまったんですが、その後、光化学スモックとかエイズで沢山の命が奪われるニュースが流れるたび、環境を何とかしなければと思いましたが、うちではお店があったり、子供がいたりして自分の考えを表に出すことが出来なかったんです。その状況に変化が表れたのは、中央区で女性海外研修者を募集したので、自分の思いを言葉に出さなくてはと思いまして応募しました。スェーデンに行った時に、幼稚園を訪問したんですが、2才くらいの園児たちが自分の食べのこしたお弁当の物を校庭の隅に持っていくんです。肥料にして畑にして、小さい循環なんだけど、小さい時からの意識づけがあるから、あれだけの環境大国になったんだと実感しました。そんな時、東京都環境学習リーダーという講座がありまして、篠原さんと一緒に受け、それから今の活動をしております。あとは、環境保健推進委員を帰納さんのあと引き継いでいます。
区長は昨年、区長会を代表して北欧三国を観察し、また全国都市会議にも参加しましたが、そのあたりの感想をお聞かせください。
区 長 地球環境の保全には「Think globally Act locally」、地球規模で考え、足元から行動するというこれはもう何でも通用する素晴らしい含蓄に富んだ言葉なんですけど、環境問題を解決するには日々の生活から行動していかなければ、という本当に奥ゆかしい言葉です。昨年8月、フィンランド、スエーデン、デンマークの北欧三国を、日本が直面している少子高齢化の中でいかにして活力ある社会を作るべきか、の命題で視察しました。三か国ともに環境問題には熱心に取り組んでいるのに驚かされ、感銘を受けました。特にスカンジナビア半島のスエーデンでは1センチづつ土地が隆起しているんですね、なぜかというと、氷河が重く大地をおさえていたけど解け始めているから軽くなって上がってくるので、地球の温暖化が進んでいるということでしょうが、手を打っていかねばと思いましたね。まちづくりでも、フィンランドではどこに行っても森が見えるんですね。ヘルシンキから1時半ぐらい電車に乗っていてもどこからも森が見えて、地球規模に学ばせていただきました。名古屋の全国都市会議は、「環境と共生するまちづくり」という題で、副題が「多様な主体の共働による美しい都市をめざして」でした。3月から「愛地球博」が開かれます。名古屋がなぜ環境に熱心かというと、渡り鳥の飛来地、富士前干潟を埋めてごみ処分場を計画していたんですが、市民や環境団体の動きで中止に追いこまれたんですね。それから市をあげて、ごみ環境に取りくみ出してね、松原市長の基調報告も聞きましたけど、「一周遅れからトップランナーへ」という題でね、処分場がなくなったんですから市をあげてごみ減量にとりくんで成果をあげたんですね。環境問題は地球規模で進行していて「待ったなし」ですから。地球、人類が破滅する時にさしかかってきているんですから、その重要性を見て、日々の生活態度から改めていくということが必要だということを、確認しましたね。今は全ての自治体が競走の時代ですから、中央区としても真剣にとりくんでいきます。
企業も真剣に社員に徹底を
96年から環境に優しい企業を認定するISO24001が発効し、国の環境JISも作成されています。企業にとってこのISOを取得することがステイタスになっているように思われますが、このあたりはどうですか。
篠 原 横浜のキリンビール工場を観察したところ、「ごみゼロミッション」という徹底した分別をしていました。どういうふうにしているかというと、大きな分類したものを担当者がこと細かに分けてそれをリサイクルに回すんです。職員全てがわかっているんですかと聞いたら、それはわかっていない、担当者だけと言ってました。残った食料はその場で乾燥して、その日のうちに業者に渡します。
喜 納 それを有機栽培してサラダバーやパーティみたいなことやるって聞きました。リコーでは、食堂でだす昼食のご飯の量を大・中・小にしたところ、毎月出る生ゴミの量がドラム缶20個あったのが2個になったそうです。
篠 原 毎年々々、基準というものを作り出していくのが企業にとって大変なことのようです。
喜 納 法律を守るということは遵守することで、法律が変ったときどうするのかと聞いたら、専門の業者があって情報を流してもらうようにしていて、いつ変っても困らないようにしているということでした。
篠 原 企業にはマネジメント部門があって、社長の決めたことがそこから下におりていくけど、根底は一人ひとりが出来ることからということで、ISOというと固苦しいけれども、一人ひとりの認識から始まっているということです。
喜 納 知り得た情報をトップにつなぐということを義務付けています。上と下がいつもつながるようになっている役所もあります。
篠 原 キリンさんでは表に対してもクリン活動をしていて、川を守るために山のゴミを拾ったり、下草刈りをしたり、そういう社会活動も含めて活発ですね。
嘉 納 隅田商事さんは地元ということで「うち水」をやっています。真夏だと二度ぐらい地表温度が下がるそうです。ブーケ21で下水道局さんの協力で保育園の園児やネットワークも参加してやりましたところ、1.5度くらい下がりましたね。隅田商事では、新川で風力発電と太陽光電で災害対応型の給油所や、本石町では循環型有機農法によるベーカリーとレストランも運営しています。
篠 原 一昨年、ネットワークとして「ISOよもやま話」という研修をしまして企業にパネラに出ていただき、皆さんうちとけて、大企業の方もISOがすごく身近になった理解していただいて、すごくよかっと思います。
喜 納 小さい企業と大きい企業からお話を伺い、お金がかかっているが共通の話題でした。大企業は各地に事業所や工場などあり、それぞれの事業所でISOを取得している場合、会社統合認証にすると登録・審査費用が大幅に削減できるそうです。小さな企業のISOの事務局は、各人に渡す書類づくりなど事務に負担を感じています。この発言に対し、専用の場所にファイルを置き、みんなに閲覧してもらう方法にすると、時間も紙も削減できるという提案がありました。
ものを売るデパートでもISOにからんで販売にまで及んで努力していると聞きましたが。
喜 納 デパートは社員の入れ替りがはげしいので、毎日、入社する方がいらっしゃるそうです。そのつど、いちばん大切なことなので一人ひとり毎月一回、ISOの教育を受けるそうです。とてもお金のかかることですが、一人のために現場で混乱するのでは困りますから、そこは徹底しているようです。また、各個人が取り組んでいる環境目標として、「ご飯を残さない(食べる量を注文する)」と書いたカードを見せていただきましたが感心しました。高島屋さんの担当者から聞きました。
篠 原 ロイヤルパークホテルさんでも、昨年ISOを取得して、社員が目標を決めて一人ひとり実行するよう心がけているそうです。
家計簿の普及と子どもへの期待
区 長 名古屋の都市問題会議でトヨタ自動車の環境部長さんが講演したんですが、自動車企業というと公害をまきちらす代表企業のように思われがちですが、一生懸命なんだね、今。環境と経済が両立するまちづくりを目指しているそうで、環境付加を及ぼさないような車をつくる技術革新、これも大事なんですが、市民参加と同様に事業者参加の促進を訴えてましたけど、ずいぶんためになりましたね。だから、本区でも平成14年11月27日にISO14001を取得して全庁あげて取り組んでいるわけです。そして各企業の皆さんにも協力をよびかけています。なんといっても本区は事業者の数が都内の自治体で一番多い4万5千もありますからね。ただね企業の中にも、ディーゼル車規制にからむデータを偽造したというので、東京、千葉、埼玉、神奈川の4都県が三井物産を告発しましたが、こういう悪い企業に対しては、行政からもそうだし、市民の皆さんから監視していただいてね、これも大事だね。そういうことによって、環境に一生懸命やる企業、そうでない企業、これを峻別して、一生懸命やる企業は皆んなで育んでいくことが必要だね。
環境ネットワークの皆さんによく「環境まつり」が今回は月島第二小学校で行われまして、親子づれの参加者が多くて大変にぎわったんですが、小学校で開放することになった、いきさつを教えてください。
篠 原 やはり、小さい時から自分の身近な生活の中に環境というものを具体的で築いていけたらいいかなと思って、環境の道すじの入口を開けてあげたいと思い企画しましたが。たまたま月二小の校長先生がその日のうちにOKを出していただいたもので、行政にも「いいことだ」と言っていただいて決まりました。企業色を全面に出してはまずいということで、この点でもご理解とご協力をいただけました。
喜 納 今の会員は個人65、企業40で環境学習には15、6の企業が参加してブースが17できました。
篠 原 子どもたちと地域の方の体験型ということで環境学習リーダーにも仲間に入っていただきました。
川 名 私もネットワークの会員ですが、それ以外に東京都の環境学習リーダーという仲間を持っていますので、呼びかけました。一本の木をはかることでどのくらいの二酸化炭素を吸収してくれるか、人間が一年間に吸収する何人分を一本の木で助けてくれるか、または自動販売機もエネルギーを消費しますけど、何台分を助けているのかそういう、一本の木から身近な問題を子どもたちに考えていただきました。結構子どもたち興味を持ってくれました。区長さんにもおこしいただきましたが、いかがでした。
区 長 昨年の11月6日でしたね、すばらしかった、感服しました。皆さま方の努力、熱意をひしひしと感じました。あの風力発電もわかりやすいですね。樹木が何人分の二酸化炭素を吸収しているかなんて、ふだん気にしないことで、樹木の役割がよくわかりました。
篠 原 中央区ならではということで、築地市場の魚屋さんの集まりである魚商さんの協力でマグロの解体をしたんですが、すごい人気を集めました。
喜 納 実行委員会を5回開いて、その中で研修会を行いました。子どもの目線を大切にするということで、大人の押しけなくしてやりたいということで、それが皆さん、あとからとても良かったと言っていただけたんですね。
区 長 いろいろネットワークの皆さん苦労されて、区も負けないよう頑張らないといけませんね。
スエーデンの子どもたちが、お弁当の食べ残しを畑の肥料にするという話、とても印象的ですね。
川 名 そうですね。窓際にその光景を見たとき、ああ、これは大人たちが言わなくとも、子どもたちが自然に体の中で覚えていくんだ、だから今回も自分で試しながら何かやりながら、「こんなに地球にやさしいんだよ」と、その扉を叩いてくれただけでも良かったと思っています。
喜 納 いま「京都議定書」ということで家庭やオフィスにも浸透してきているんですけど、私たち環境ネットには「環境家計簿」の普及というテーマがあります。2年で500軒を達成しました。体験型の学習教材といえるもので、省エネセンターの主催による省エネ学習コンクールの学習教材アイデア部門で優秀賞をもらったんです。身近なふつうの生活の中で、冷蔵庫に入れる容器を透明にしておけば中味がすぐわかるので出す時間が短くてすむとか、入れなくていいものは出すとか皆さんと体験して工夫を重ねています。
川 名 子供にお話したんですが、企業にISOがあるようにISOを家庭と子どもたちにもってもらって、うちがどれくらい地球にやさしかってね。子ども(キッズ)ISOという施策があるんですから、子どもたちがやれば大人たちもやるんですよね。
篠 原 大人も一緒に来てくれるので「環境まつり」の参加者が増えたと思うんです。キッズISOは関った子どもには認証をあげるシステムになっているので、中央区でも広げたいですね。
川 名 東京都に環境保全推進委員会がありまして、家庭部門が他より伸び率が高くて全体の4分の1になったんです。京都議定書のこともあり、家庭から二酸化炭素をなくしていこうと、環境家計簿があります。他の区でもやっているんですが、「あんなの駄目だよ」というのは結構多いんです。配って、あとのフォローがないので「面倒くさい、難しい」でうまくいかない。うちの場合は、会長が苦労しまして、データー化して、お金に換算して「どのくらい節約できたか」を数字に示し、おまけにご褒美をもらえる、というふうにしたんです。具体的な道すじを示したほうが、自覚できていいんですね。
区 長 キッズISOは、国際芸術技術協力機構が運営する子ども向けの環境マネジメントプログラムで国連大学などの協力で唯一ISOの名称使用を許されています。東京都は新年度から本格的に導入し、本区でも小学校のモデル実施をふまえ検討していきます。新年の環境カレンダーは子どもたちによって各戸に届いていて、環境家計簿もPRしています。
もっと幅を広げ中央区が先頭に
今まで環境問題に取り組んでこられて、今後、区にこうしてほしいと思っていることをお聞きします。
篠 原 今、マンションが増えてきているんですが、一階を明るくするシステムづくりをしていただきたい。ヨーロッパは一階は店などテナントが入って明るい。塾帰りの子どもが危険ですし。
川 名 防犯対策は入口中心にとっているんですが、その周囲が暗いんで、歩いて通る私たちは不安なんです。
篠 原 昔の賑わいを取り戻してほしい。環境に興味をもつ子どもたちを認証するなどして、人口が増えているので、区も協力してほしい。
区 長 区では現在、ごみ減量・リサイクルを中心に100人規模の講演会を年四回、またリサイクルハウスかざぐるまで各種のリサイクル教室を毎月実施しています。新年度には、人材を育成するための環境講座についても、工夫して開催したい。相次ぐマンションはセキュリティ重視のあまり閉鎖的になりがちなので、建築指導で調和をはかってまいります。コミュニティの活性化という点でも重要ですからね。
喜 納 私たち、ISOよもやま話をやってまして、気づくのは企業の気持ち、ひとつづつ違うんですね。中央区のISO会議に出座させていただいて、そこで私たちの意見も言って、お手伝いもしたいんです。中小企業に対しての環境問題の指針づくりというか、たとえば「エコアクション21」とか、区独自で考えていただければ、と思うんですが。
区 長 平成16年2月に発足した、ISO推進会議は区内十三業種の企業を構成員として今まで4回開催されています。会議では、ISO取得にあたっての各企業の考えや運用方針の発表など、熱心に討議を行っています。今後、新たなテーマの作成においては環境団体が会議に参加して、企業と意見の交換ができる場を検討します。また、区内中小企業の環境付加を制限することへの支援策については、新年度にISO取得に向けての実践的なセミナーの開催を検討しています。
川 名 私、日本橋川、亀島川流域の委員会に属しているんですけど、亀島川にだいぶ前に出来たテラスが今、なんの利用もなく勿体ないと思うんです。鎧橋周辺には渡し船があったということですから、そこを結ぶ活用がないかなと思います。私たち、神田川、隅田川、日本橋川を結ぶツァーを企画するんです。川から見る町、橋は上から見るのと全々ちがうんですね。日本橋川から上を見ると真っ暗、日光が入らないから、これでは川が汚れるのは当り前と実感します。それは人が川に関心がないからで、関心を持ってもらうためには人を川のそばにつれいくことで、それには亀島川テラスの活用がよいと思います。今は川に背中を向けていますので、昔のように、日本橋川から釣り糸をたれて魚をつるような、そんな日本橋になればいいなと思います。
区 長 私も何回か船に乗ったことありますが、雰囲気が全々ちがうんですね。だから川は再生しなきゃいけないなと思っています。
川 名 船でいくと、汐の満ち干は1メートルぐらいありますので船でくぐれない橋もありますが、そういう川の条件もあるでしょうが。
区 長 皆さんのおかげで川の水もきれいになって、魚も増えていますからね。日本橋川、亀島川については、東京都がいま再生構成を作成中です。亀島川の階段状のテラスを緑の散歩道にしようと区も検討しています。これらの河川は首都高速がかぶさっていて、川ぞいの緑化がされていないので親水性やうるおいがありません。植栽する場所や方法を工夫することで護岸の緑化につとめたい。すでに小綱町児童遊園の護岸には五種類のツタを使って実施しています。
水辺をもっと活用してほしい
最後に、お一人づつ、環境問題についての今後の抱負をお聞かせください。
篠 原 中央区環境ネットワークもまだ3年目なんですね。ですから基盤づくりにもうちょっと力を注ぎたいと思っています。それと同時に環境の情報を得ながら、他区や地方もふくめて連携をとりながら会員の協力で中央区の環境保全につとめていきたいのと、中央区は都市型なんですが残された少しの自然環境にも目を向けたい。環境保全にいろんな分野と関わらなければ解決しないことがありますので、たとえば中央区の文化とか歴史に関る人たちとの心の交流も大切にしたい。その中にソーシャルキャピタル、地域力を利用しながら情報を交換し、私たちネットワークが接着剤になって、企業、行政の意見を聞きながら会の活動をつなげていければ、と思っています。
川 名 環境について考えるというのは、環境の達人になるというのではなく、広い視野に立った環境を考えていきたいと思います。環境を守るということは、つきつめていけば命を守るということなんですね。空気とか水や緑を守るには平和な世界でなければならないし、環境を破壊することは簡単に出来るけれども、守るということは大変です。タンカーの事故で油にまみれた水島も一瞬の事で、少しでも破壊にならないようにしたい。私は子どもたちと関りあいながら、仕事の関係でお年寄りとも関りあいながら、そういう人たちの環境を守りたいと思っています。ネットワークは情報を共有し、それをいろんな所に発信をして、それをまた返していただき、大きな活動に広げればいいなと思います。
喜 納 区内の未利用の環境資源を発掘したり、省エネ教室や省エネモデル校が情報を持っていただき、新しい企業の環境情報も生かしたい。下水道局で普段は見ることの出来ない顕微鏡を見る機会がありましたが、そういうものを皆んなで利用して活用したいですね。今まで築いてきた企業との信頼関係を大切にしながら、そういうことを進めていきたい。それから、子どもと一緒に浜離宮の草むしり、バードウォッチングをして、子供と自然を結びつけることもしたいですね。築地市場の移転には反対ですが、跡地の利用ということでは、区民の心のふるさとになるような、未来にのこることができたらいいな、と思います。
区 長 この2月16日には、地球温暖化防止のための国際的な取り組みである京都議定書がいよいよ発効し、そうすると我が国は温室効果が六パ削減となります。こういう重い責任を負うことになりました。本区は首都東京の核であり、経済活動の拠点があるので、環境負担が都市の中ではいちばん多いんではないかと思います。そいうことから先頭に立つ覚悟で取り組みたい。様ざまなご意見をうかがいましたが、環境を守ることは命を守ることと同じなんだ、というところまで追いこまれているわけですから、行政が先頭に立つ覚悟で取り組んでいきたい。区民、企業、団体の皆さんと連携をつよめ、幸い本区は日本の要(かなめ)の位置にいるのですから、世界に向って発信するつもりで意欲的ですから皆さんもどんどん行政に注文してください。
長時間にわたり貴重なご意見をいただきありがとうございました。
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