年内にも都と合意
「築地市場移転に断固反対する会」の総会が21日、開催され、地元住民らで構成された「築地市場地区の活気とにぎわいビジョンづくり委員会」による中間のまとめが報告された。万がいち、市場移転になっても伝統ある築地の「にぎわいと食文化」を維持するための方策が具体的に描かれている。同時に環状2号線の地上化が行われた場合の環境・まちづくり方策についても対応している。中央区はこのビジョンを以って東京都と接しょうに入り、12月にも合意を得る方針だ。また地元への説明も並行して進めていく。
市場なき築地地区の整備について、中間のまとめは次の考え方を明らかにした。
(1)「食文化」の継承(場外市場一体となった地区の活性化) これまでの食の集積拠点としての機能を市場移転後も維持することで、現在築地に訪れているプロのニーズに応え続けるとともに、築地に受け継がれてきた文化・技術や、今後の食産業を担う人材の育成、食の楽しさを提供する。日本の「食文化」の中心としてのまちづくりを、場外市場と一体となり、推進していく。
(2)水辺と緑を生かしたまちづくり 浜離宮庭園・隅田川などの資源を最大限活用し、東京を代表する風格とうるおいのある景観づくりを進める。また、来街者・生活者の視点に立って、開放的でかつ回遊性のある、魅力あふれるまちづくりを推進していく。
(3)新たな都心の魅力と向上につながるまちづくり 「食文化」の拠点機能に加えて、新たな都市観光、地域の活性化につながる機能の誘導を行い、都心全体の魅力の向上を進める。新たな機能の導入に加えて、周辺市街地や既存の歴史・文化資源(歌舞伎座、築地本願寺など)とのネットワークの更なる向上を図る。また、周辺市街地とのバランスを考え、高度利用を進めるエリアと開放性を重視するエリアとで、メリハリのあるまちづくりを推進していく。
こうした考え方にもとづいて「中間のまとめ」は、市場跡地を3つのゾーニングによる活用を提案している。
<場外市場と一体化した活用エリア>場外市場と隣接して現在の駐車場出入口(晴海通り)までのエリア。回遊性を確保する観光案内、賑わい施設の設置▽鮮魚マーケットと場外市場の一体的な賑わい空間の形成(食文化の拠点〜水際商業施設への連結)▽「築地」を継承するプロ(小口買出人)が利用する鮮魚マーケットの設置▽観光客が利用しやすい憩い、休憩所や利便施設の設置▽食文化を発信、継承する拠点機能の確保(食の専門職大学院、アンテナ店舗など)▽都市観光拠点として観光バスも利用可能な大型駐車場の設置。
<区のまちづくりと整合性のある高度利用エリア>市場の正門と環状二号線の出入口を含む中央部分。場外市場から浜離宮を結ぶ地区の骨格としてのプロムナード整備▽築地市場から水際を結ぶ地区の骨格としてのプロムナード整備▽環状2号線沿道に環境対策による豊富な公園や緑。
<用途や容積率を制限した地域貢献エリア>隅田川から築地川本川(浜離宮)に至る水際は高いビルを建てない。
こうしたゾーニングを実現していくため、区は次の3点を都市に要望する。
(1)市場跡地の売却に当たって、乱開発を防ぐために明確なゾーニングによるメリハリのある活用を図る。
(2)場外市場と連結する食のエリアについては区に無償貸与する。
(3)入船橋下の地下道(カルバート)から晴海通りをくぐり勝どき橋に沿って地下で晴海豊洲に向う都市高速晴海線は着手のメドが立っていない。ゾーニングに支障をきたすので計画の見あわせを要求。
なお10月補正予算で入船橋下のカルバート入口広場の活用が計上されている。
環2で活発な論議
場外が心情を発露
反対の会
21日に開かれた「築地市場移転に断固反対する会」で、代表の古屋勝彦氏(商工会議所中央支部会長)は、中間のまとめについて「東京全体の活性化につなげたい」と語り、また矢田区長は市場に関する東京都の強引な姿勢を批判しつつも「手をこまねいていては乱開発になりかねないので、たたき台をまとめ、都に不退転の決意で対処していきたい」と決意を示した。また区議会の押田議長は、議会として抗議文や意見書を区と共に都に提出した経過を説明したうえで、中間のまとめによって「築地の将来が明るくなることを期待している」と挨拶した。
審議では築地6丁目町会の小林会長が、食のエリアを都から無償貸与する見通しをただしたところ、区は「最低限そうしてもらわないと場外市場は生きのこれない」と不退転の決意と出来る見通しについても明らかにした。
月島の新川氏は、勝どき橋の川下に出来る環状2号線の新しい橋について「ただ車が通るだけでなく観光客が訪れる橋にしてほしい」、また売却地の開発について「買った人が勝手にマンションを建てたり汐留のような開発にしないで」と要望した。
共産党の鞠子幹事長は、環状2号線の地上化が地域の賛同を得られていない中で、中間のまとめが環状2号線の地上化計画を前提にしていることは、事実上の背信行為だ」と決め付けた。区長は「市場と環状2号線は一体であり、地域の反対も承知しているが、もちろん原案通りでは駄目で少しでも改良しようとの案であり、それなりの努力であると思う」との見解を示した。
築地場外振興組合の北島理事長は、鞠子委員の指摘について「スジとしては、もっともだ」としつつも、市場がなくなることは場外にとって死活問題が故に断固する会に参加したものの、昨年末に市場移転が本決まりになるに及んで、「次善の策として我々の活性化を検討してきた。中小企業診断士の助言なども参考にして、中間のまとめは我々にとって有り難いものだ」と発言。さらに神田市場の移転に反対した業者は全て廃業した事実にも言及して「同じ意味あいを私は感じているし、いつも不安で悩んでいる。今回のビジョンは一条の光明といえ感謝している」と、場外業者の心情も明らかにした。
築地4丁目町会の高田氏は「若者に夢を与え、プラスになると思うので雑音にこだわらず実現してほしい」と、念を押した。
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