6月都議会の一般質問に登壇した立石都議が、市場の移転と環状二号線に言及したことは既報のとおり。質問に立った立石都議は、隅田川を中心にした水辺の再生についても質問した。石原知事は答弁で東京の水辺の現状を「指摘のとおり」と認め、外国の例を示しながら「ビルも裏口すら川に向かっていないていたらく」を考え直す必要があると答えた。立石都議の質問と知事ならびに理事者の答弁をまとめた。
銀座中央通りにかかる、古くなった日本の民間経営の高架橋を、景観の上からも塗りかえようと、カラーコンテストが昨年8月に開かれた。審査委員長はデザイナーの栄久庵憲司先生で、全国から937点の力作が応募され、選ばれた最優秀カラーは、19世紀、広重の東海道五十三次シリーズ浮世絵の中から、この地で当時の広重が見上げた江戸の空だった。白から藍へ、独特のぼかし上げによって表現されている。この空の色を21世紀の東京の空に再現したいとの思いを込めて選ばれた、製作者は女性建築家と女性デザイナーの2人。
そこで以下、幾つか東京の景観について事例を挙て、過去、現在、未来について質問します。
水門の景観を問う
東京は戦後の焼け野原から復興して大きな発展はしたが経済にやや力点を置き過ぎた嫌いがある。初めに、水門。町中にある一例を挙げれば、東西線茅場町の駅を出て100メートルほど歩いたところに日本橋水門があり、ビジネス街に巨大な鉄板の遮へい物をあらわしている。水害に大切な機能を果たすのはわかるが、周辺の景観に余りにもそぐわない状況となっている。今後の改修に当たって、東京の水門と町並みとの調和をどのようにするか、所見を伺いたい。
電柱電線の地中化
また、電線類の地中化も、東京の景観のみならず、治安防災の上でも大切だ。一日も早い目標達成を望むが、幹線道路の国道、都道、区道などではかなり出来上がっているが、区市町村の枝線などではまだまだ。阪神・淡路の大震災でも、電柱電線類の倒壊で避難路をふさがれて被害が拡大した。東京の治安・防災上からも地中化率を高める必要がある。推進への課題と都の対策について伺いたい。
船着き場にフェンス
東京の川の堤防が、かみそり型から水に親しめる空間になりつつあり、都民の皆さんが散策しながら楽しんでいる。しかし、その場所に最近、周辺にそぐわないネットフェンスに囲まれ、カギをかけられ閉鎖された防災船着き場が出来た。そこは常時利用され、景観上も、ネットフェンスを水辺にマッチしたデザインに改めるべきだ。
このように、まちの中にいわゆる土木構造物をつくるときには、構造や経済性を考えることはもちろんだが、東京を石原知事のいう千客万来の都市とするためには、その観光資源としての価値にも注目し、景観に十分配慮していくことが必要と考える。
石原知事の答弁
土木構造物の景観の配慮については、まさにご指摘のとおりだと思う。
世界のいろいろな都市には例えばローマの水道橋であるとか、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジなど各国から観光客がそれを目指して訪れる歴史的建造物が多くある。日本にも、それほど人が集まらないが、南禅寺近くの京都のインクラインであるとか、東京においても、皇居や国会周辺、隅田川にかかる幾つかの橋は、パリのセーヌにかかる橋にも劣らない、非常に美しい、由緒のある歴史と文化を象徴する景観を醸し出しているが、このように土木構造物は、都市景観への吸引力、インパクトが非常に大きく、景観向上の牽引役となってきた。
しかし、どうも東京の状況を眺めると、運河も含めて、東京の川はほとんどもうコンクリートの3枚張りになって川からどこへも上がれない。まして、その川に面している大きなビルディングも全部背中を向けていて。裏口すら川に向かっていないというていたらくであって、こういったことをこれから考え直す必要があると切に思う。
まさに、町並みとの調和に欠ける新しい施設が増えつつあるが、景観の向上は容易ではないけれども、今後とも、土木構造的のデザインに創意工夫を重ねて、東京を外国の美しい都市と比べても遜色のない風格のある都市としていきたいと思う。
都技監の答弁
<水門の景観>水門は高潮や津波から都民の生命と財産を守る重要な施設である。現在、都が管理している水門は河川や港湾区域に33か所あり、ほとんどが完成から30年以上経過している。このため、平成7年度から計画的に水門の修繕を進めており、その際、周辺に調和した色彩などを採用している。今後とも水門の修繕や補強などに当っては、建物のデザインや色彩などについて周辺の景観に十分配慮したい。
<電線類地中化>幅員の狭い道路での地中化技術の確立経緯やノウハウの蓄積、事業負担の軽減などが地中化の課題になっている。都としては今後とも、さらなる地中化技術の開発、区との地中化促進会議を通じた情報提供や技術支援、国庫補助率引き上げの提案要求など区の地中化事業を積極的に支援していく。
<防災船着き場>現在、隅田川など船の航行が可能な河川において23か所計画して19か所が完成している。このうち9か所の船着き場について水上バスや学校、地域の行事のための船の発着場として利用しているが、今後、区や屋形船の業者団体などの協議をし、平常時の利用拡大を図っていく。船着き場のフェンス等の外構の整備に当っては、水辺の景観との調和に十分配慮してまいりたい。 |