築地の郷土資料館で「描かれた区内の名所」をテーマにした特別展が開かれている。6月30日まで。
江戸以来、今日の東京に至るまで各地にランドマークになる名所が誕生し、それらを多くの画家たちによって描かれ続けてきた。広重の「名所江戸百景」はそうした作品の代表といえるもので118景のうち中央区を描いたものは16景にのぼる。
明治になると維新の欧歌によって錦絵が登場。誇らしげに銀座を中心にした洋風化された東京が次々と紹介されていった。レンガ街はもとより外国人居留地、築地の海軍施設などが新しい名所をかかえ、絵のテーマになった。
東京は震災と戦災の大きな被害にあうことで風景をすっかり変えてしまうと同時に人も大半が入れ替ったといわれるが、そうした変化の時代も絵として残されている。
江戸と東京は木と紙の文化であったため、名所は遺されることがなく消えてしまったが、今になって絵で場所と時代を追えることは日本文化の幸運かもしれない。展示されている作品は京橋図書館など区が所有する作品。開府400年の余韻を楽しんでみよう。 |