中央区教育委員会は平成14年11月、スポーツ振興審議会(会長=松井巖司元教育委員)に「都心区における子どもの体力向上策」を諮問したが、今年2月にその答申案がまとまり、4月28日に開かれた区議会の文教委員会(押田満理子委員長)で明らかにされた。この中で中央区の児童は50メートル競争では男女とも全国に比較して上回っているものの、往復持久走、ソフトボール投げでは男女と全ての学年で全国平均を下回っていることが判明。身体を動かす機会が減少していることが原因とするとともに、朝食をきちんと食べている子どもほど持久力のある事実についても答申は言及している。さらに中央区児童の肥満傾向者率を全国平均と比較すると、男子は全ての学年で全国平均を上回り、女子は低学年で下回っているものの6年生では全国平均の2倍を超える比率になっている。体力低下の原因として環境や生活習慣の変化とともに「人を知識の量で評価する」傾向にも原因があると答申は指摘している。そこで答申は学校、家庭、地域が連携をとりながら「ラジオ体操の普及、スポーツの習慣化、指導者の派遣、部活動の支援」を提言し、また「学校を安全な遊び場として整備することが特に望まれる」と強調している。
学校の「遊び場活用」も提言
持久力、投力が劣る
中央区の小学校児童の体力テストの結果を東京都、全国と比較してみると、50メートル走については男女ともほとんどの学年で中央区が上回っているが、20メートルシャトルラン(往復持久走)、ソフトボール投げについては、男女とも全ての学年で全国平均を下回った結果となっており、特にシャトルランの結果をみると、子どもたちのスタミナ不足が心配される。
このように「持久力」「投力」が全国平均に比べ劣っているのは、自由に走り回ることのできる場所、ボール遊びのできる場所が少ないこと、放課後に一部の児童を除いて多くの児童は帰宅し、帰宅後は遊びや家庭の手伝いなどを行うことも少なくなり、身体を動かす機会が減少していることに起因するものと考えられる。
朝食とる重要性も
11、13、16、19歳の50メートル走、持久走、ハンドボール投げについて、運動・スポーツの実施頻度別に成績を比較すると、すべてのテスト項目において運動・スポーツを「ほとんど毎日(週3日以上)」が「しない」群を上回っている。
同様に、1日の運動・スポーツの実施時間別に成績を比較するとすべてのテスト項目において、運動・スポーツをする時間が、「1日に2時間以上」が「1日に30分未満」の群を上回っている。
さらに朝食の摂取状況別に体力をみると、特に持久走に顕著な差(朝食摂取が食べないより上回る)がでている。
男子は全学年肥満
東京都の学校保健統計書による11、13、16歳の男女について昭和54年度から平成14年度にかけての24年間の推移をみると、男女ともに肥満傾向児(学校医により肥満傾向で特に注意を要すると判定された者)の割合は増加しているが、男子の割合が女子より高くなっている。また、年令が上るにつれ肥満傾向児の比率は低くなっているが、16歳女子では昭和54年度の2.85倍に増加している。
肥満傾向者率について中央区の児童を東京都、全国の平均と比較してみると、男子では全ての学年で全国平均を上回っており、女子では低学年が全国平均を下回っているが高学年では全国平均を上回っており、6年生では2倍を超える比率となっている。
食生活乱れが原因
東京都が平成14年に行った「児童・生徒の健康に関するアンケート調査」においては、自分の現在の健康状態についての質問に対し、「ねむい」と答えた小学生は東京都で44%、中央区では30.6%、中学生に至っては東京で77.3%、中央区では78.1%となっている。
また、NHK放送文化研究所が行っている「国民生活時間調査」によれば、昭和40年度から平成12年までの35年間で、平日の睡眠時間が小学生で39分、中学生で46分短くなっている。
食生活については、朝食を欠食したり、食事の内容についても、動物性の脂肪分や糖分をとり過ぎたり、栄養のバランスがとれていないなど問題が多いという指摘がある。
朝食の欠食理由を見ると、「時間がない」「朝食の用意がない」と回答した子どもが小学生男子を除いては、半数を超えている。
このような子どもの食生活習慣の乱れは、都市化や核家族化、夜型の生活など国民のライフスタイルの変化によるものと考えられる。深夜テレビや24時間営業の店舗など人々の生活を夜型に導くものが世の中にあふれ、また、深夜に及ぶ大人の現代生活は、偏った食事や睡眠不足な子どもの生活習慣までも変えた。
「知識で評価」も原因
子どもの体力低下は、人を知識の量で評価し、学習塾などに通わせることにより、子どもに積極的に外遊びやスポーツをさせなくなったことにも一因があると考えられる。
知識を過度に重視する保護者をはじめとした大人の多くは、子供の体力低下が及ぼす影響への認識が不十分で、外遊びやスポーツを通して身体や精神を鍛え、思いやりの心や規範意識を育てることを軽視している。 |