財団法人「三井文庫」は、3月23日に開かれた理事会・評議員会で、室町2丁目の三井本館(三井不動産(株)所有)に平成17年秋に「三井記念美術館」を開設することを決定した。
三井文庫は約300年の歴史を持つ三井家と、その関係事業に関する各種資料をはじめ主に江戸時代以降の経済史・経営史ならびに文化史に関する資料を収集、保管し、学界の利用に供している。三井文庫はこれらの研究活動が評価されて、文部科学省の管轄する特定公益増進法人に指定されている。
今回の「三井記念美術館」の所蔵品は、主として三井家から寄贈されたものであり、日本および東洋の古美術品を中心に、絵画、拓本、書籍、茶道具、懐石の器・調度品、装身具・工芸品、能面、刃剣切手と多岐に及び、数量は、美術品3700点、切手類13万点を数える。そのうち、国の指定文化財は、江戸後期の京都画界重鎮である円山応挙の代表作「雪松国屏団」をはじめ6点の国宝と茶道具など20点の重要文化財がありさらに重要美術品に認定されたものも44点に及ぶなど、質・量ともに著名な私立美術館と比較して遜色ないと、三井文庫は説明している。
三井文庫別館の現状は、展示室124平方メートルと満足いくものでなく、世界に誇れる文化財をより多くの人々に鑑賞してもらうために、その候補地を検討してきた。このたび三井家ゆかりの地であり、三井グループ発祥の地でもある日本橋に位置し、平成10年に重要文化財の指定を受けた三井本館が、伝統的な日本文化を広く紹介する場所としては最もふさわしいと判断し、三井グループ各社の支援のもと別館を移転し「三井記念美術館」として開設することとなった。
現在、歴史的建築物の保存と周辺と調和した開発の両立をめざして「三井室町新館」の建設工事が平成17年秋の竣工をめざして進められている。「三井記念美術館」は、この再開発全体においての重要な要素としても位置づけられている。三井本館隣の「三井室町新館」タワー低層部に整備されるアトリウム空間の1階からがメインアプローチとなる予定。
新美術館は「日本の伝統的な美と文化を広く社会に紹介することにより、来館者に心の豊かさや潤いを感じていただく場所、文化の普及に貢献する美術館をめざします」とのコンセプトを明らかにしている。「三井本館の重厚・壮麗な特徴を生かした、品位のある美術館とします」とも説明する。
新美術館の展示面積は970平方メートル、全体面積は2870平方メートル。
なお切手には10代三井高陽が収集したコレクション約6万点もふくまれ、また交通史研究という視点からは日本とヨーロッパを中心とした、飛脚状や消印もふくまれる。
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