地域の教育力との連携 安全で安心の学校づくり
「中央区の教育を考える懇談会」は平成14年6月に教育長の諮問を受けて、「これからの教育のあり方」「より望ましい教育環境づくり」の2点について検討してきた。同年12月に中間報告があって、その中で提言された中学校の通学区域、自由選択制については4月から具体化される。最終報告が2月25日の区議会文教委員会(押田満理子委員長)で明らかにされた。時代に応じた地域との連携、安全対策、教師の質の向上については一定の方向性(記事本文)が示された。しかし、2学期制の導入、小学校、幼稚園の通学自由選択制、幼保一元化については「慎重な検討が必要である」として先送りになった。区はすでに新年度から、特色ある学校づくりをめざす新しい教育検討会を区長部局も入って設置することにしており、これら先送りのテーマも検討の課題にしていくと教育委員会は話している。
学校に任せない
子どもたちの健やかな成長を考えるとき、学校教育の充実はもちろんのこと、家庭や地域社会の教育のあり方を見直すことが大切である。しつけや基本的な生活習慣の育成など、本来、家庭教育でなされるべき事もふくめ、その全てを学校教育に任せてしまう傾向が保護者の一部に見受けられる。今後は、家庭や地域社会および学校がそれぞれに本来の役割や機能を十分に発揮し、緊密に連携することで子どもたちの健やかな成長が期待できる。
一部の学校では、保護者である父親が自主的に「おやじの会」等を設け、学校と家庭・地域社会の連携に一定の役割を果たしている例もある。また、各学校では、健全育成連絡協議会等において学校、保護者、地域住民との意見交換も行われているが、教育委員会は学校、家庭、地域社会のより密接な連携のあり方について検討する必要がある。
地域と一体で推進
全ての子どもたちが安定した気持ちで学校生活を送るには、日ごろから健全育成にかかわる教育を適切に推進するとともに、教育相談体制をはじめケア体制づくりや教師による早期発見、早期対応が不可欠である。
各学校は、日常の指導とさまざまな危機を想定した訓練を通して子どもの危機回避能力の育成に努めるとともに、保護者・関係機関との緊密な連携や協力体制の構築に努めなければならない。
教育委員会では、これまで全教職員にサイレン付きメガホン、防犯ブザーの供与、学校施設への監視カメラ、人感センサー、警察署とホットラインで結ぶ警報ボタンの設置や火災報知器による消防署との連携など、万が一の場合には迅速に対応できる体制を整えてきた。また、公園と一体整備している2校(有馬、月1小)に民間ガードマンを配置して不審者の侵入防止に努めるなど、さまざまな対策を講じてきた。さらに、「子ども110番」実施や全児童生徒に防犯ブザーの配布を行ったが、子どもたちの安全性の確保には家庭・地域社会の協力が不可欠である。
今後は各学校・幼稚園において、防犯教育、安全教育の徹底を図るとともに、家庭では安全教育・指導の徹底、地域社会では保護者や地域住民、商店街等が一体となった子どもたちの安全対策を図る必要がある。
先送り課題の見解
<2学期制の導入> 授業時間数の確保が図れる、学期ごとに各教科、科目のまとまった内容に指導と履修の認定がしやすい反面、学校行事や学習のリズムと連続性の面で課題があることなどから、引続き検討する。
<幼稚園の自由選択制> ほとんどの幼稚園が小学校との併設であり、小学校と同様の通園区域になっていることから、通園区域の見直し、自由選択制の導入については小学校と合わせて慎重に検討する必要がある。
<幼保一元化> 近年の人口増加と併せて働く母親の増加により、幼稚園における保育の実施や保育園との一体化、一元化に対する保護者の要望が強くなりつつあるとともに国においても一体化園設置の動きがある。このため、これらの導入について検討するとともに、保育園との交流・連携の実践が必要である。
<小学校の自由選択制> 自由選択制は、保護者や子どもたちの主体性を生かし、より希望に添った学校へ就学ができる、特色ある学校づくりが期待できるなどの声があり、平成15年3月に実施したアンケート調査の結果からも、多くの区民が通学できる学校を選択できる制度を希望している。したがって、通学区域の見直しや、子どもや保護者の希望によって就学できる仕組みを導入することにより、区民や保護者から各学校の教育活動の状況に対して今まで以上に強い関心がもたれることから、こうした制度の導入は子どもや保護者にとって多様な学習の機会を提供することが保障されると同時に、各学校の特色づくりや教育活動の活性化、教員の意識改革にもつながるものと考える。
しかし、小学校については歴史的に地域とのつながりが深く、自由選択制の導入によって地域の子どもたちと学校とのつながりが希薄になる、学校間の格差が生じるなどを懸念する意見がある。 |