店内は広くて明るく、きれいに磨かれたガラスケースには美味しそうな和菓子が並んでいました。季節の生菓子の控えめな美しさ。噂の「金鍔」。どれもこれもステキで目移りしてしまいます。と、その時目に入った一際目立つ赤く平たい缶。これが人気の「梅ぼ志飴」です。
それは、もう何年も前に亡くなった祖母が、大好きでいつも身近においていた飴でした。缶を見てそのことに気づいた途端、その飴と祖母との思い出がいくつも蘇ってきました。遊びに行くといつもこの飴をもらったこと、幼心に宝石のようにきれいな飴だと思っていたこと、小さな粒にぎゅっと詰まった濃厚な甘さがじわっと口いっぱいに広がるあの幸福感etc…。それは、ちょっぴり遠いものだった老舗が、ぐっと身近に感じられるようになった瞬間でした。それまでは「歴史」「江戸の香り」「確かな品質」といった点に老舗の魅力を感じていたのですが、それと同時に、両親、祖父母、先祖と私、そしてきっと子孫が、幾代も変わらぬ同じものを愛で、その日常と思い出を受け継ぎ、つながっていけるというロマンもあることに気づいたのです。
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