A) “いぼ”は皮膚から盛り上がっている小さな突起物一般を指す俗語で、患者さんが“いぼができた”と訴えて受診するものには、さまざまな皮膚病が含まれています。最も多いのはヒト乳頭腫ウィルス(human papilloma virus: HPV)が感染してできるウィルス性疣贅(ゆうぜい)ですが、その他にも中年以降に首にできるスキンタッグ(中年いぼ、首いぼ)や、日光が当たる部位によくできる脂漏性角化症(老人性いぼ)、プールでうつる伝染性軟属腫(みずいぼ)などのほか、悪性腫瘍も含まれるので安易な自己診断は禁物です。
皮膚科医が“いぼ”という場合、通常はウイルス性疣贅を指しますが、ウイルス性疣贅にも多くの種類があり、原因となるHPV型によって見た目が異なります。最もみる機会が多いのは尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)で、95%以上を占めると報告されており、子どもの手足によくできます。HPVは皮膚に小さな傷があるとそこから入り込んで、表皮の基底層にある細胞(基底細胞)に感染して“いぼ”を作ると考えられており、指のささくれや足の裏などによくできるのです。特に足の裏ではウオノメやタコなどと鑑別する必要がありますが、表面をメスなどで削ると古い点状の出血斑を認めることが多いのが特徴的とされます。
“いぼ”にはこれなら絶対治るという薬や治療法はありませんが、ごく初期には感染力を有するウィルス粒子が検出されないことが多く、早期に治療することが重要です。-196℃の液体窒素を皮膚にあてる冷凍凝固療法は、痛みを伴い、後で水ぶくれになったり、血豆になったりすることもありますが、保険適応があるため安く、簡便で、治癒率も高いので第一選択の治療法になります。ただし1回では治らないことが多く、1~2週ごとに数回の通院が必要です。なお顔は治療後に黒ずむことがあるので、日に当たらないように注意してください。また痛みに耐えられない場合や治療を続けても改善がみられない場合には、相談して他の治療法に変更したり追加することも可能です。3ヶ月で3割、2年で7割強が自然治癒するとの報告もあり、必ず治ると信じて根気よく治療を続けることが大切です。
何かありましたら近くの皮膚科専門医にご相談ください。