A.狭窄性腱鞘炎、ばね指でしょう。
手の指には、手の甲側に伸筋腱、手のひら側に屈筋腱があり、これら腱の作用で指の屈伸が可能となります。屈筋腱には腱が浮き上がらないように押さえる腱鞘というトンネル状の鞘(さや)がありますが、成人の場合、指の使い過ぎにより腱と腱鞘の間に機械的刺激が加わることで炎症が起こり、指の付け根に痛みや腫れを生じます。これを狭窄性腱鞘炎と言い、進行すると腱鞘が厚くなり、腱が肥大し固くなることで、腱と腱鞘の間の滑りが悪くなります。そのため、指の曲げ伸ばしの際に引っかかるようになり「ばね現象」が生じます。妊娠時、産後や更年期の女性に好発し、親指に最も多く(約60%)、中指(20%)、薬指(15%)と続きますが、どの指にも生じます。関節リウマチ、糖尿病、アミロイドーシス等ばね指をきたしやすい基礎疾患もあります。また小児例は先天性とされ、親指以外に起きることはまれです。
診断
指の付け根の関節の手のひら側に圧痛や硬いしこりがあり、「ばね現象」を認めれば、診断は容易です。超音波検査を施行すると、ばね現象や腱鞘炎の程度が観察できます。
治療
まずは使い過ぎを避け、局所の安静を保つのが基本です。副木を当てて固定することもありますが、消炎鎮痛剤入りの外用剤、なかでもテープ製剤が効果的です。また、腱鞘内にステロイド剤を注射すると炎症が早く治まりますが、頻回の注射は腱の弱化をきたすという報告もあるので最小限にとどめた方が無難でしょう。保存療法に抵抗する例や曲がったまま動かなくなった場合に手術を行います。狭くなった腱鞘を切開し、広げてやります。局所麻酔での「日帰り手術」で行え、傷口は小さく、ほとんど目立ちません。まずは整形外科医に相談しましょう。