Q.最近、物事を忘れっぽくなり脳が衰えた気がします。年齢のせいで仕方ないでしょうが、何か対策はありますか。(64歳 男性)

A.人は、記憶力の衰えにとても不安を感じます。これほど、人間としての能力の衰えを感じさせる瞬間が、他にはあまり無いからです。記憶力の衰えについての関心は昔から高く、多くの科学者たちがその研究にとり組んできました。
 加齢とともに起きる変化として「短期記憶」が衰え「長期記憶」は保たれます。これは普通に起きる、脳の歳のとりかたです。短期記憶とは、たとえば直前に覚えた電話番号や新聞の見出しなどを記憶する能力の事です。一方の長期記憶は、たとえば自転車に乗る行為など身体が覚えている「手続き記憶」などが含まれます。
 記憶の詳しいメカニズムの説明は今回は割愛し、記憶力を維持する具体的な対策をお伝えします。まず、加齢で問題になる短期記憶の衰えを防ぐ訓練としては「踊り」や「ピアノ」などのレッスンなどをして、知覚運動を鍛錬することが重要です。これにより、脳細胞に電気的・化学的な刺激の連鎖反応を引き起こします。この電気信号を出し入れすることで、短期記憶の能力が維持されます。もうひとつの長期記憶は、加齢によりそれほど影響を受けない部分だと言われますが、それでも記憶の貯蔵庫である長期記憶の衰えは、私たちを不安にさせますね。この能力の維持には、複数の事柄をひとまとめにして印象づけておくことが鍛錬になります。具体的な例を挙げると、今日会った初対面の人の名前を記憶しておくために、相手の顔はもちろん、出会った「場所」、「そのときの天気や服装」、「その日のできごと」などをひと纏めにし、印象づけて覚えるようにします。このような記憶の訓練によって脳の中で化学的な変化が起こり、刺激された脳細胞の間での結合が強まります。脳細胞の間で結合が強まるのは、何歳になっても可能だと言われています。実践し反復することで、脳内の情報伝達網が強化され、長期記憶として安定します。つまり何かに関連づけて覚えることを意識していけば、記憶力はアップするということです。これは、歳のせいだけではないかもしれませんね。
(※ただし、許容範囲を超えた短期記憶の衰えや「認知機能」の低下が疑われる場合は、病的な状態の可能性も考える必要がありますので、専門医への相談をお勧めしています)


◆参考文献:Robert Goldman, Ronald Klatz , Lisa Berger (1999). Brain Fitness. Main Street Books,333p.

  
  

菅井先生がお勤めの病院をご紹介します

病院名 医療法人社団 東京シナジークリニック
診療科 一般内科診療(保険診療)・自由診療(保険外、アンチエイジング診療)
診療時間 午前9:30~13:00 / 午後15:00~18:30
定休日 水曜日・土曜日午後、日曜日・祝日は休診(※予約制のアンチエイジング診療は水曜も診療日です)
住所 〒104-0051 東京都中央区佃1-11-8 ピアウエストスクエア2F
電話番号 03-6219-5100
ホームページアドレス http://www.synergy-clinic.com/
  
 
copyright 2004 Tokyo Chuo Bissiness Navi All Rights Reserved.