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中央区のお医者さん

2008.12月号
 

『オムツが取れない…』
トイレット・トレーニングについて

 『オムツが取れない…』というお話を聞く事があります。どのように考え、トイレット・トレーニングをしていけばよいのか一つのやり方をお示しします。

 

Q. どんな神経の働きで、排尿されるのですか?その神経は、どのように赤ちゃんから大人へと発達していくのですか?

  A. 膀胱に尿がたまると膀胱の内面にある神経受容器がはたらいて、その刺激が脊髄神経を経て延髄まで伝達されます。延髄は、反射的に排尿させる中枢であり、神経機能の未熟な乳児期早期においては、膀胱に尿がたまると反射的に排尿してしまいます。
乳児期後半になると、しだいに無意識的な抑制がはたらき、膀胱に貯留する尿量が増加していきます。それと同時に、尿がたまったという情報は、延髄からさらに上位の大脳皮質にまで伝達されるようになります。
  1歳前後になって大脳皮質の機能がある程度整い、自立歩行ができ、ことばもしゃべれるようになると、膀胱に尿がたまったという刺激は大脳皮質にまで伝達され、はじめておしっこしたいという「尿意」を知覚することが可能となります。この尿意を知覚して、意識的に抑制し、トイレやオマルで排尿することができるようになることが「排尿の自立」です。

Q. トイレット・トレーニングとは?
  A. 無意識のうちにおむつに排尿していた状態から、“おしっこしたい”といった尿意を感じて、自分の意志でオマルやトイレで排尿できるように教えていく過程が「トイレット・トレーニング」です。

Q. トイレット・トレーニングは、どんな風に進めていくのですか?
  A. 例えば、以下の4つのステップで考えると分かりやすいと思います。
まずは、
ステップ(1)トレーニングを開始する準備段階―排尿間隔があくかを知る。
  自分で上手に歩けるようになって、ことばもいくつかしゃべれるようになると、大脳皮質がある程度発達して、尿意を感じることができる準備に入ったと評価されます。
 まず、よく観察して排尿の間隔を把握し、排尿の間隔が2時間近くあく時をみつけます。この排尿間隔があくということは、膀胱に尿をたくさん貯めることができるようになったということを意味しています。
 この段階になると、次のオマルやトイレの誘導に移行することが可能になります。

ステップ(2)オマルやトイレに誘導―はじめは偶然に排尿
 排尿間隔が2時間ぐらいあいた時をねらって、トイレやオマルに誘導してみます。
膀胱に尿が多量に貯留しているので、たまたまタイミングが合えば排尿しますが、はじめのうちは偶然のことです。この誘導した際に何回か排尿できると、そのうちに誘導すれば排尿するようになります。
 誘導のタイミングは、排尿間隔があいた時に加えて、起床後、おやつの前、散歩の前、午睡後、入浴前などの「生活の節目」で誘導することです。遊びやテレビに熱中している時に、無理に中断させて誘導しても子どもはいやがり排尿してくれないようになります。
 誘導して偶然にオマルやトイレで排尿した時は、そのおしっこを見せながら「チィでたね」と声がけをすることが大切です。子どもは尿が出た「放尿感」、尿を目でみて確認する「視覚的認知」、母親の「チィでたね」という声がけを耳にする「聴覚的認知」の3つの感覚を同時に体験します。この3つの感覚を同時に体験した時、これまで無意識のうちにおむつに出てしまったのが「おしっこ」なのだと、体感を通して理解することができるのです。
 オマルやトイレに誘導してもしてくれず、床の上にもらした時も、しかるよりも「チィでたね」と、3つの感覚を印象づけるようにしていくことが肝心です。

ステップ(3)昼間のおむつをはずしてみよう
 誘導すれば排尿するようになると、昼間のおむつをはずすことになりますが、一般的に誘った時の半分は排尿するようになってからです。
ただ、尿で畳や床、じゅうたんが汚れたり、洗濯物が増えることの状況を見ながら生活に合わせて判断されればよいことです。

ステップ(4)仕上げ段階―「ママおしっこ」と言えるには
 誘えばできるが自分からなかなか「チィ」といってくれないという時にはタイミングをわざとずらしてみましょう。誘うのをぎりぎりまで待って膀胱にいつもよりたくさんの尿をためさせて、尿意を子どもに感じさせてから誘導します。
この時、タイミングがずれて失敗してもしからないことが肝要です。尿意がわかればそのうちに自分から「チィ」といってくれるようになります。

ステップ4は仕上げの段階であり、しからず、焦らずに見守ることが大切です。

Q. トイレット・トレーニングの時期は、ありますか?
  A. 各家庭やその子の状況によって、時期は異なり一概には言えません。
 早い子もいれば、遅い子もいます。
 多くの場合、トイレット・トレーニングは、おそくとも2歳半ごろにはスタートされ、3歳中には自立しています。ただ、4歳でも自立できていない子もいます。
 なお、夜尿(おねしょ)の問題は、日中のトイレット・トレーニングとは少し異なります。夜間睡眠時の夜尿をしなくなる排尿の自立は、2〜3歳から始まり、5〜6歳で約8割の子が自立しています。


※『心と体の健診ガイドー幼児編―』編集 日本小児科連絡協議会ワーキンググループを参照しました。

 
小坂先生
小坂 和輝
(こさかかずき)
智弁学園和歌山高校・広島大学を卒業し、聖路加国際病院小児科、東京女子医大循環器小児科学教室を経て、現在中央区月島で小児科専門クリニック(病児・病後児保育室を併設)を開業。中央区医師会理事。抗生物質の適正使用、児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、少年犯罪、メディア・リテラシーについてNPOと連携して取り組む。本人は社会企業家でありたいと望む。小一と3歳の2児の父。趣味は株・飲むこと・走ること。

小坂こども元気クリニックホームページ


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2008年12月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  
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