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中央区のお医者さん

2008.9月号
 

子どもの血尿について

 大人の場合、血尿が出ると、泌尿器科及び腎臓内科でがんも念頭に注意深く診療していく必要がありますが、子どもの血尿に対しては、どのように考えればよいでしょうか。 
 子どもの血尿についての考え方を説明します。

 

Q. 血尿とは?

  A. 尿中に血液中の成分(赤血球)がもれ出ている状態のことをいいます。
 ただし、正常でも一日1000万個以上の赤血球が尿中に排泄されていますので、それ以上を血尿といいます。
 血尿は、大きく肉眼的血尿(尿の色がコーヒーやコーラのような色になる状態)と、顕微鏡的血尿(尿の沈渣を400倍の顕微鏡で見て、1視野に3〜5個以上の赤血球を認める状態)に分けられます。顕微鏡的血尿は、さらに、その沈渣赤血球数に応じて、高度、中等度、微少血尿に分類されます。

Q. 3歳児健診や小学校の健診で、血尿が指摘されたという話をよく聞きます。
  A. 患者家族が尿の色調変化に気付いて受診するのが、肉眼的血尿です。
 健診の検尿で偶然発見される場合、顕微鏡的血尿です。
 その他の症状がない状態であれば、無症候性血尿とよばれます。

Q. 子どもの血尿の場合、どのような病気が考えられますか?
  A. 診断上大事なことは、その血尿が、各種腎炎による血尿(糸球体性血尿)か、あるいは腎炎以外の血尿(非糸球体性血尿)かを鑑別することです。
 現在、各種血液・尿検査が容易に行われ、超音波検査が普及したことで、非侵襲的にかなりの範囲まで診断を絞り込むことができるようになっています。
 具体的にどのような病気が考えられるか述べますと、発症形式からみて、

 急性に発症する腎炎では、
(1)溶連菌感染症後に発症する急性糸球体腎炎
(2)病原性大腸菌O157感染後に発生する溶血性尿毒症症候群
(3)急速進行性糸球体腎炎
(4)紫斑病性腎炎
があります。
 どれも発症が急激であり、蛋白尿をともなったり、紫斑・関節痛を伴ったりします。

 慢性に発症する腎炎では、
(1)IgA腎症、
(2)巣状糸球体硬化症、
(3)膜性増殖性糸球体腎炎、
(4)ループス腎炎、
(5)遺伝性腎炎
などがあります。
 IgA腎症や膜性増殖性糸球体腎炎では、学童期に多いと言われます。また蛋白尿をともなったりすることが多くあり、特有の症状や遺伝が関係したりするものもあります。

 腎炎以外で血尿を示すものは、
(1)良性家族性血尿(家族性にみられ、予後良好で治療不要。)
(2)高カルシウム尿症(尿路結石伴う場合もある。尿中のカルシウムを測定し診断される。)
(3)ナットクラッカー現象(動脈の間に左の腎静脈が挟まれた構造があるが、その圧迫が高度であった場合、左腎側がくるみ割のように拡張するもので、超音波で診断。)
(4)先天性腎尿路奇形(超音波で診断。)
などが比較的多くみられます。

(5)出血性疾患
(6)がんに伴う血尿
は、子どもでは稀です。

Q. 血尿を言われた場合、どのように診療されていくのですか?
  A. 尿蛋白がなく、血尿のみの場合、自然消退するものが多く、重症の腎炎の可能性も少ないなど、予後がよいため、外来検尿を続けながら尿所見の推移を観察することになります。
 初年度は試験紙の検査だけでなく、尿中の赤血球を顕微鏡で調べ、その数や赤血球の形態などを観察したり、血尿の増強の有無や蛋白の出現を見る必要があり(特に感冒時)、年数回の尿検査を行いますが、異常がなければ検査回数も減って行きます。血尿が長期に悪化する場合は、腎生検も施行されます。
 結論的には、血尿の経過観察を小児科でなされている段階で、過度の不安を抱く必要はまったくありません。
 当然、腎臓病でなされる運動制限や食事制限など不必要です。
 そして、おそらく、尿検査をしていくうちに、血尿をみとめなくなることが大多数だと思われます。


 
小坂先生
小坂 和輝
(こさかかずき)
智弁学園和歌山高校・広島大学を卒業し、聖路加国際病院小児科、東京女子医大循環器小児科学教室を経て、現在中央区月島で小児科専門クリニック(病児・病後児保育室を併設)を開業。中央区医師会理事。抗生物質の適正使用、児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、少年犯罪、メディア・リテラシーについてNPOと連携して取り組む。本人は社会企業家でありたいと望む。小一と3歳の2児の父。趣味は株・飲むこと・走ること。

小坂こども元気クリニックホームページ


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2008年9月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  
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