整えたブタの毛を適量つまみ、二つに折り、あらかじめ柄の穴に通しておいたステンレスの線に引っ掛けます。「引き線」といわれるステンレスの線で毛を引っぱり、柄の穴に固定させます。さらに引き線を切らずに別の穴に通し、毛束を植え込む作業を同じ様に繰り返し行います。手作業で120〜130個ほどの穴へ植え込みを行うので、その都度、毛の量・長さ・折り位置が同じになるように注意します。すべての穴に植え込んだ後、引き線を切り、金槌で叩いて整えます。柄のフタをつけて「植え込み」の作業は完了します。
「植え込み」はすべて指先の感覚で行われるため、熟練の技術が必要です。天然の毛は湿度により状態が異なりますが、製品としては同一でなくてはなりません。それがもっとも難しい点ですが、機械植えと比べ、手で微妙な調整が効き、丁寧につくることができるのが利点です。
「一度使うと手放せない」とお客様から評判を得ている江戸屋の刷毛やブラシは、こうした職方(職人)の誠意と技術に支えられています。当店は暖簾分けせず、下職制を採っています。現在、ともに仕事をしている100名にのぼる職方を大切にすることが、ひいては高品質なもの作りにつながるのではないでしょうか。また、職方の後継者を育成することも店主の務めと思っています。