掛け軸の制作には数多くの行程があり、1ヶ月、場合によっては1年以上の期間を要するものもあります。代表的な行程をいくつかご紹介いたしましょう。手がけるのは次男の昌仁です。
まずは絵や書などの作品そのものをよく吟味し、これから制作する掛軸の形式を決めた後、一文字(いちもんじ)・中回り(ちゅうまわり)・天地(てんち)の3種類の裂地の組み合わせを考えます。その後、裂地を裁断し、刷毛で塗らして「水引き」をします。これは、裂地が湿度によって伸び縮みするのを防ぐためです。裂地の形に合わせて和紙を裁断し、糊をつけて裂地に貼り、裂地と和紙が馴染むように刷毛でなぜ付けます。いわゆる「裂地の肌裏打ち」です。裂地と和紙では収縮率などが異なるので、お互いの特性を活かすことが大切です。次に、本紙の形を整えて裂地と継ぎ合わせる「切り継ぎ」を行います。左右の端の部分である「耳」を折るなど数行程の後、仕上げでは、掛け軸を巻く際の芯となる「軸」や最上部の半月型の木である「八双」(はっそう)を取り付け、風帯(ふうたい)を垂れ下げます。八双に金具を打ち、鈕をつければ出来上がりです。表具でもっとも大切なのは、なかの絵や書を最大限に引き立てること。絵と掛け軸は「主と従」の関係ですから、あくまでも主が輝くよう気をつけています。
1.「水引き」より |
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2.肌裏打ち |
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3.「紐付け」など |
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