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伝統技術[工芸編7]
京橋「白木屋中村傳兵衛」
白木屋中村傳兵衛 八代目店主・中村悟氏
インタビュー映像がご覧いただけます。
 「江戸名所八景」にも描かれた京橋は、歴史と伝統に育まれた町です。寛文4(1664)年、この地に水運を利用した青物市場が誕生。東海道を日本橋から京都へ向かう最初の橋が、町の南にあったことにその名が由来します。日本橋と銀座の間に位置し、現在でも商社や老舗などが軒を連ねるビジネスエリアとして賑わっています。
 今月の「伝統技術ー工芸編ー」は、京橋で温もりある江戸箒を作り続ける白木屋中村傳兵衛商店を訪ね、八代目社長・中村悟さんにお話を伺いました。

神事から始まった箒
 箒が掃除用具として使われるようになった平安時代には、材料に竹や稾、棕呂などが使われていました。ホウキグサが用いられるようになったのは、畳が生まれた江戸時代になってからのことです。 
 一般に掃除用具として使われるようになっても、箒は不思議な力を秘めた道具として使われる伝統が残っています。たとえば、妊婦のお腹を新しい箒でなでると安産になるという「おまじない」は、四百年経ったいまもその風習が残っています。静かで優しいこの道具には、その起源にまで遡れば、家族の平安を願う心も込められていたのかも知れません。
 
インタビュー風景
いま見直される伝統の技
 白木屋中村傳兵衛商店は、天保元(1830)年、現在の銀座に畳表を商う店として創業。後に箒の専門店として発展し、代々その技が受け継がれてきました。昭和の時代に入り、電気掃除機の普及や住まいの近代化の影響で、一時需要が落ち込みましたが、使い心地の良さが見直され、近年、再評価されています。また、1985年頃から全国の百貨店へ展示会を始め、広くお客様に知っていただくことが出来ました。ひとつひとつ丁寧に作られる箒の魅力に喜んでいただく度に、後世に伝承していくことの責務を痛感しております。
 
 
江戸箒の魅力
 江戸箒を一度も使った経験のない方は、昔のモノというイメージが強いかもしれません。しかし、一度ご利用いただければ、いかに我々の生活を豊かにする道具かが納得いただけると思います。
 江戸箒の利点は多々ありますが、弾力性に富み、当たりが柔らかく腰があるので、力をいれなくても掃き出しやすいのが大きな特徴です。そのため手首や腕に負担がかからず掃除ができます。また、掃除機とは異なり、騒音や排気がないので、いつでも気兼ねなくご利用いただけます。
 使い方にもよりますが、天然草を原料としているので約5〜10年ぐらいは十分に長持ちし、そのうえ使えば使うほど、草についたあくが、畳や板の間にツヤを出すのも江戸箒ならではの魅力の一つといえます。

 
    職人技
一徹な職人技と心意気
 白木屋中村傳兵衛商店で、祖父の代から箒職人として江戸箒を作り続けている高木清一さんにお話を伺いました。高木さんの作る江戸箒は、律儀で優しい箒と評判です。熟練した職人の稀少な技術に、指名買いされるお客様も数多くいらっしゃいます。
「江戸箒は手作りですから、作る人の気持ちが、出来映えや掃き心地に影響します。また、それが使う人の気持ちを左右するので、こだわりを持って質の良い江戸箒を作り続けていきたいと思っています。
私は、祖父、父と三代続く箒職人の家に生まれ、小学生の頃から手伝ってきました。以来60年間に渡り、江戸箒作り一筋に生きてきた生粋の職人です。代々伝承されてきたのは、伝統的な技術以上に職人としての心意気なのかも知れません。末永く愛用いただき、最後までおろしたての心地よさを楽しんでいただける箒を、つねに真心こめて作り、また、その気持ちを次の世代に伝えていきたいと思っています。」
   
江戸箒づくりの要とは
 江戸箒を作るうえで肝心なのは、手間をかけた「穂選り」です。修業の第一歩はここから始まり、一人前になるまでには約3年を要します。穂は、用途別に硬さ、長さ、色など12〜3種類に分けますが、三分の一はこの段階で捨ててしまいます。芯と皮穂の間に穂先のないガラの部分を入れながら隙間を作ります。麻糸で丹念に締めあげながら束ねることにより、江戸箒独特の弾力が生まれます。それらを綿糸で糸かけし、柄竹のくせを見て使い易い取り付け方向を決め銅に差しこみ、穂先を切り揃えて整えた後、座布団で寝押しをしたら完成です。
 どんなに機械化が進んでも、江戸箒独特の使い心地は、この手作業でなくては生まれません。なぜなら、全工程に渡り、箒全体のバランスをみながら制作しなくてはならないからです。
この様に熟練した職人を育て上げるには長い歳月がかかるため、後継者問題は今後の大きな課題といえます。

1.胴締め2.柄を打ち込む3.穂先を整える
1.胴締め  

2.柄を打ち込む

 

3.穂先を整える

制作風景

国産と外国産の違い
 青い穂先をした箒は、主に海外で作られたものです。草を脱色した後に青い染料で煮るために青く染まりますが、そのような製法では、繊維自体が弱くなってしまうので、折れやすく、またクセがつきやすくなってしまいます。
 天然の草で作られた江戸箒は、丈夫でクセもつきにくいので、大変長もちします。もしクセがついてしまった場合でも、霧吹き等で水に湿らせ、手ぐしで形を元に戻し、吊しておけば元に戻ります。基本は、箒を下向きに置かず、乾燥防止に時々霧を吹くことも大切です。
 

江戸箒
江戸箒の使いおろし方
 長柄の江戸箒の場合、掃きやすさを持続させるには、左右を相互に使い、減り方を均等にします。また収納する時は、柄を上にし、壁に掛けるなどして収納してください。座敷用の箒の先が磨り減ったら板の間や台所用にご利用ください。さらに古くなった場合には、土間、洗面所やトイレ用として、最後は庭掃除用に使いおろしていきます。江戸箒は、ご家庭の環境に合った理想のリサイクルアイテムといえるでしょう。

 
DATA  
店舗
商品
白木屋傳兵衛

住所:東京都中央区京橋3-9-8 白伝ビル1F
電話:フリーダイヤル (0120)375389 (ミナゴミハク)
営業時間:8:30〜17:30 (土・日、祝日休み)
最寄り駅:地下鉄都営浅草線・宝町/地下鉄営団銀座線・京橋
URL:http://www.edohouki.com/
 


2004年10月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  
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