私の父は鹿児島の人で、大工の棟梁になりました。主に寺宮大工の仕事が多かったですね。母親は日本橋の出身です。 九州の保利茂という大物政治家がおりました。本願寺の門信徒会(国会議員の会)なんですが、その人の話しです。「人の心を動かすのは権謀術数や手練手管ではない。結局、誠実です。ひとことで言えば百術は一誠に如かずと言う諺に表されます。」と教えられました。 私は、資格というもので生きるより、職人のような世界に心ひかれます。職人という仕事は資格じゃないんですね。包丁研ぎであれば、それがいかに切れるかが勝負で、ものを作りだす世界には、ウソとゴマカシは通用しません。板前さんもそうです。味が落ちればお客は離れていきます。今の世の中は皆んなが資格を追い求め、いつとはなしに資格のみの世界に埋没してしまう社会制度を招いているのではないでしょうか。資格を自分の既得権益として、人の世界に欠かすことのできない心の動きを忘れ、そのために金属疲労を起こしている。私は、ものを作っていく厳しい世界にこそ人の生活の知恵がある、と思っています。