私自身は上海の生まれですので、中央区との関わりは、大学生の頃に時折銀座を訪れる程度でした。昭和38年の柏原洋紙店(現・株式会社柏原紙商事)入社後、日本橋に通うようになりました。当時は京橋から中央通りを通ってくると、ビルの合間に古い建物がポツリポツリと残っている状態でしたね。弊社は、まだ木造平屋の古い店舗で、なかでも目立って古かったと記憶しています。現在のビルを建設したのは昭和47年で、高度成長の時代を反映するかのように、中央通りはほとんど銀行が占めていました。ここ数年は日本橋地域の再開発が進み、様々な商店も増え、表通りのショーウインドにも華やかさが加わったような気がしています。
漆器は自然の素材を利用して手間と時間をかけて仕上げられる塗り物です。化学塗料が主流になりつつある昨今ですが、漆ほど優秀な天然の塗料はありません。年数がたつほどその風合いや味わいは増してきますし、なによりも温もりが感じられます。木地を吟味し、重ねて漆をかけた本塗りの漆器は、日本の誇るべき伝統工芸品だと思っています。戦後、日本人の生活が急速に欧米化し、日常品から調度品まで洋風のものが主流になっています。漆器は高価で手入れが難しいというイメージが先行しがちですが、漆器本来の良さを十分にご理解頂き、末永く愛用して欲しいと思っています。
漆器の素晴らしさをたくさんの方に知って頂くために、産地と協力しつつ様々な模索を続けています。木の粉と樹脂を混ぜたもので木地を形成し、それに漆をかけて強度や軽さを出したり、価格をお求め安くするなど工夫して、現代にアピールする多種多様な商品をご提供出来るよう努めています。
日常品から趣味の工芸品、外国の方へのお土産など用途に合わせてお選び頂きたいと思います。また、お得意様サービスとして、黒江屋独自の“うるしカード会員”制度を設け、年に数回のセールも開催しております。お手入れの方法、お手持ち品の修理など、漆器関連の情報を満載した黒江屋のウエブサイトもございますので、是非ご覧ください。
(http://www.kuroeya.com/)