日本橋、京橋界隈の老舗には良く出かけます。明治屋や千疋屋などは、新しい食材、珍しいものが手に入り、いつ行っても変わらぬ魅力を備えていると思います。またデパートのウインドウショッピングも楽しみの一つです。中央区のデパートは、どこに行ってもお洒落なものが多かったのは、子供の頃も今も変わりありません。なによりも女性が一人で出かけ、ゆっくりお茶を頂きながらお買い物が楽しめる、そんな落ち着いた街の魅力が素晴らしいと思います。
素晴らしい作品や役との出会いということもありますが、舞台の魅力はなんといっても毎回毎回が真剣勝負ということではないでしょうか。舞台に出る前の緊張感や恐ろしさは出演歴に関係なく、たいへんなプレッシャーを感じます。しかし一歩舞台に上がれば、どんなことがあっても演じ通さなければなりません。とても難しくエキサイティングな仕事ですが、それを楽しみたいと思っています。また、私自身の信条としては、常に前向きで過去は引きずらないと言うことでしょうか。「宵越しの金はもたない」的な下町育ちの気質があり、舞台は“消えもの”で、舞台に立っている時だけが全てという、その時々で全力投球する生き方が性分に合っているような気がします。
文学座に入り、大先輩である杉村春子先生と出会えたことは、私の人生でとても大きな出来事だと思っています。先生と身近に接し、お芝居のこと、また人間として生きていく上で大切なことをたくさん教えて頂きました。どんなことがあっても手を抜かない、気を抜かない方でした。またお芝居で相手役として絡んでいるときには、絶対に目を逸らさずに、しっかりと相手を見据えて芝居をなさっていらっしゃいました。日常の生活でもこうした真摯なお考えや態度は一貫しておられ、とても魅力のあるお人柄でした。役とともに素晴らしい人間性も、先生に少しでも近づけたらと思っております。