東洲斎写楽 市川男女蔵の奴一平

東洲斎写楽が写したのは演目「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」で、伊達与作(だてのよさく)の家来役の奴一平(やっこいっぺい)です。本図では十四歳で役を演じた一世市川男女蔵(いちかわおめぞう)が初々しい表情で描かれ、当作は「赤襦袢(あかじゅばん)」の愛称で親しまれました。文化・文政時代に名優とうたわれた、男女蔵の力量がすでに表われています。