A) 骨粗しょう症による脆弱(ぜいじゃく)性骨折の可能性が高いでしょう。まれですが、何らかの疾患による病的骨折の可能性も否定できません。整形外科専門医への受診をお勧めします。
骨の強度は、骨の量(骨密度)と質(骨質)で決まります。骨の量が減少したり骨の質が劣化したりして、骨がスカスカになって弱くなった状態が骨粗しょう症です。骨の強度が弱いために、とくに大きな外傷が加わらなくても自然と骨折を起こしてしまうことがあります。脆弱性骨折と言い、某製薬会社のテレビCMでお馴染みの「いつのまにか骨折」もこれに当たります。
骨粗しょう症は男性の約3倍と圧倒的に女性、とくに閉経後の女性に多くみられ、50〜60歳代から急速に増えはじめ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
古くなった骨は、皮膚などと同様、常に新しくつくりかえられています。骨の新陳代謝は古くなった骨を壊す(=骨吸収)破骨細胞と新しい骨を作る(=骨形成)骨芽細胞によって行われますが、そのバランスが崩れると骨粗しょう症になる危険が高まります。
骨折が生じやすい部位は、背骨、手首、太ももの付け根、腕のつけ根、骨盤、脛(すね)の骨などです。とくに太ももの付け根や背骨の骨折がきっかけとなって要介護状態となる場合が少なくなく、健康寿命を長く保つためにも早期診断、早期治療が大切です。
診断にはX線検査や骨密度の測定が必要です。
骨密度検査には一般に数種類の方法がありますが、治療ガイドラインでは大腿骨の付け根と腰で計測するDXA(デキサ)法が標準とされています。また、血液検査で骨代謝マーカーを調べると、骨形成と骨吸収のバランス、つまり骨の新陳代謝の程度を把握することができ、治療の選択上有用です。
上記検査の結果、骨密度が低い場合、骨折をきたす危険性が高い場合には、内服薬や注射などによる薬物療法を始めます。
また、現に骨折が認められる場合は、例えば背骨の骨折などではコルセットの装着などそれに応じた治療が必要です。
骨粗しょう症は何よりも予防が大切です。普段から、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウムなどを十分とり、バランスのよい食事を心掛けましょう。また、適度な運動、晴れた日には日光浴を行い、転倒に注意しましょう。
自治体が行っている女性対象の公的節目検診をできるだけ受け、とくに閉経後の女性、骨折の既往のある方は、整形外科医の定期的な検診をお勧めします。
医師だけでなく、多職種のメディカルスタッフが,相互に連携しながら骨粗しょう症の予防と改善および骨折防止に取り組む、学会主導の骨粗しょう症リエゾンサービスも始動しています。骨粗しょう症マネージャーの資格をもつメディカルスタッフが常駐するクリニックや病院が今後増えていきます。気軽にスタッフに相談して、骨粗しょう症を予防しましょう。