A. 「疲労骨折」と呼ばれ、代表的なスポーツ障害のひとつです。特定のスポーツ動作が繰り返されて骨の同一部位に慢性的に外力が加わると、顕微鏡レベルの微小な亀裂を生じ、やがて肉眼レベルの骨折をきたします。記憶に新しい某大型遊園地のジェットコースターのボルト落下事故の原因は金属の疲労破壊とされていますが、これが骨に起きたものが疲労骨折です。スポーツ開始の低年齢化、早期からの競技専門化、診断技術の進歩などによって、疲労骨折の頻度が増えていると言われています。
中学~高校生に多く起こりますが、これは、発育期の骨が丈夫な骨膜で被われ弾力性に富む一方で、未熟で大人の骨よりも強度が低く、ストレスに対して脆いためです。運動内容や運動量、体型、環境などの因子も発症に関わっているといわれています。
Q1) 高校1年、陸上部に所属しています。1カ月前から脛(すね)が痛くなり、昨日から着地の際に激痛が走るようになりました。病院に行ったところ、骨折と診断されました。転んでもいないのに骨折することはあるのでしょうか?
Q2) 脛(すね)の骨に一番多いと言われました。他に起きやすい部位はありますか?また、どんな競技選手に多いのですか?弟もスポーツ好きなので心配です。
A. 荷重や筋力の影響を受けやすい下肢にもっとも多く起きます。脛骨と中足骨で半数以上を占め、腓骨、足舟状骨、膝蓋骨、大腿骨、踵骨など、どの骨でも起きる可能性があります。上肢では尺骨、有鉤骨、中手骨など、体幹では肋骨、腰椎、恥・坐骨、仙骨などに見られます。競技別では、陸上競技、なかでも中距離選手にもっとも多く、バスケットボール、野球、サッカー、バレーボール、ハンドボール、ソフトボール、ラグビーなどが続きます。
部位別にみると、肋骨はゴルフや野球、手の有鉤骨鉤は硬式野球、尺骨はソフトボール、第2中手骨はテニス、仙骨、恥・坐骨、大腿骨は陸上長距離、膝蓋骨はバスケットボール・ハンドボール・バレーボール、脛骨内側顆はジョギング、腓骨は陸上長距離、足関節内果はサッカー、第2-4中足骨は陸上中長距離、第5中足骨基部はサッカーなどの競技で起きやすいことが知られています。発症に競技のプレースタイルが大きく関わっているのが想像できると思います。
Q2) 診断と治療はどうするのですか?
A. 痛みの出始めの時期には、X線検査では分からないことが多く、経過とともにはっきりとした骨折線や骨折周囲の所見(仮骨形成)が認められるようになります。痛みが続く場合には1-2週間置いて再度検査してもらうとよいでしょう。MRI検査も有用です。
治療は、痛みを誘発するスポーツ動作を中止するだけでよいことが多いですが、時にギプス固定を要することもあります。治癒が遷延する場合は低出力超音波パルス治療器を使用して骨折部に刺激を与えると骨癒合が早く得られます。難治性で再発を繰り返す場合は手術が必要となることもあります。痛みが長く続く場合や急に悪くなった場合は、早めに整形外科医に相談してください。