ひとつの小刀を仕上げるまでに、およそ2週間かかります。まず始めに、地金と刃金(はがね)を組み合わせる「荒治(あらじ)」を行います。地金には、神社・仏閣や古い蔵を解体した時に出でくる和釘や蝶番(ちょうつがい)などの和鉄を使用します。和鉄とは、タタラ製鉄法(日本古来の製鉄法)を用いて砂鉄から作られた鉄ですが、現在は入手が困難になっており、当店では、約350年前の和鉄も保管しています。火力の強いコークスで火を焚き、その中に地金や刃金を入れ、スプリングハンマーや金槌で打ちながら、ふたつを鍛接します。「鉄は熱いうちに打て」と諺にもあるように、スピードと集中力が要求され、まさに火花を散らす作業です。
「火造り(ひづくり)」では、「荒治」で鍛接した地金と刃金を火で熱した後に叩き、形を整えていきます。一連の行程は、感触を確かめるように素手で行われ、ハンマーに伝わる振動や音など、五感すべてを集中させます。
ひと晩かけてゆっくり熱を冷ました後、削って形を整える「仕上げ」をし、秘儀の水で冷却して硬度を出す「焼き入れ」を行い、さらに、砥石で研いで小刀の切れ味を出す「研ぎ」をします。刃先に表れる地金と刃金の組み合わせ加減に職人の技が生きづいています。また、産地の異なる2種類以上の和鉄を練り上げて複雑な模様を作り出すといった「技」もあります。
1.ホウシャと鉄ロウをまぶす |
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2.鉄をたたく |
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3.削って小刀の形を整える |
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