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新富は明治時代、「東京一の劇場」と謳われた芝居小屋・新富座があり、歌舞伎関係者が多い芝居町として栄えていました。新富という地名もこの新富座に由来します。歌舞伎座や新橋演舞場も近くあり、まさに歌舞伎とは縁の深い土地柄です。ここに、歌舞伎役者や日本舞踊家向けに誂えなどの足袋を得意とする「大野屋總本店」があります。中村勘九郎氏や市川海老蔵氏といった、当代
の人気役者をご贔屓に抱える足袋の名店です。「大野屋總本店」の6代目店主・福島康雄(ふくしま・やすお)さんにお話を伺いました。 |
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「大野屋總本店」の歴史と足袋 |
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創業は安政年間(1772〜1779年)ですので、お店の歴史は200年以上に渡ります。長年、ここ新富の地で足袋の製造・販売を営んでおり、私で6代目になります。私どもの足袋には、誂え(注文)と既製品とがあります。誂えは、歌舞伎役者をはじめ、日本舞踊、お能や茶道家の方々から演歌歌手まで、着物をお召しになる方々がお得意様になります。また、既製品も足の太さや甲の高さによってお選びいただけ、お客様の足にぴたりと合うものをご提供しています。お店と同じ建物内に仕事場があり、採寸や型紙起こしから縫製・仕上げまで、すべてこちらで手掛けております。
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技術の伝承 |
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私自身、この家で生まれ育ったため、小さいときから自然と足袋屋の後を継ぐものだと思っておりました。先代・父からは誂え足袋に肝心な紙型の起こし方を、熟練の職人からはミシンの掛け方などを仕込まれて技術を習得しました。現在、職人はそれぞれの作業を分担しており、私と妻だけは全行程を手掛けられます。また、かつては手縫いでしたが、大正時代(1912〜1926年)にミシンを使い始めてからは、ずっと同じ作業方法を守っております。使用しているミシンには100年前のものもあるため、壊れた場合に備えて予備のミシンを用意しているほどです。白足袋の生地は木綿で、「和晒(わざら)し」という人肌に馴染みのいい白色を使うなど、和装に合う配慮をしています。
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日本舞踊や歌舞伎との深い縁 |
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当店の包装紙に「舞えば足もと 語れば目もと 足袋は大野屋總本店」と印刷されているように、これからも舞い演じる足元が美しく見える“新富形”の足袋をつくり続けていきたいと思います。歌舞伎座をはじめとする劇場にも毎月きちんとお納めし、役者さんたちが無事に舞台を務めていただけるよう願っております。今年(2004年)6月に行われた市川海老蔵氏の襲名披露公演『助六由縁江戸桜』(すけろくゆかりのえどざくら)では、私も歌舞伎座の舞台の裏で河東節(かとうぶし=芝居に合わせた唄)を唄い、足袋だけでなく芝居や役者さんと直に関わる経験を積みました。
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“新富形”足袋は、新富の町とともに |
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2代目の時代に新富の地に店舗を構えてから、ずっと同じ場所で営んでおります。現在の木造の建物も関東大震災後に建てましたが、戦火にも耐えて長く残り、まさに新富とともにあるお店といえます。私もここで生まれ育ち地元の学校に通うなど、この町とともに歩んできました。かつて新富座という芝居小屋があったことから歌舞伎や舞踊とは歴史的にも縁が深く、また、足袋を納めるにも便利な立地です。これからも熟練の職人さんたちと協力して、ここで生まれた”新富形”の足袋を守っていきたいです。幸いなことに息子が後を継いでくれますので、将来も心強く思っております。 |
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大野屋總本店
特別誂え足袋(3,700円)、足袋(3,000円〜)などの他、普段使いに適した色足袋、「お金(あし)が入る」と言われる縁起物の福足袋(1,000円)など、さまざまな足袋が揃っている。既成の足袋は同じサイズでも幅の広さや甲の高さで、細・柳・梅・牡丹と種類も豊富。自分の足にぴったり合った快適な履き心地の足袋を選ぶことができる。また、和装肌着やガーゼのねまき、パジャマ、ご主人手描きの干支にちなんだ手ぬぐい(450円/500円)など、独自の色と柄の和装雑貨なども豊富で、通はもちろん、足袋のビギナーにも嬉しい品揃えになっている。
(価格は税抜価格) |
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住所:中央区新富2-2-1
電話:03-3551-0896
営業時間:9:00〜17:00 土曜、日曜、祝日休み
最寄り駅:東京メトロ有楽町線新富町駅/東京メトロ日比谷線築地駅/東京メトロ日比谷線及び都営地下鉄浅草線東銀座駅 |
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